【ネタバレ感想】『男はつらいよ 私の寅さん(第12作)』は、寅さんの優しさがよくわかる作品だった

ふぉぐです。

ついさっき、『男はつらいよ 私の寅さん』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『男はつらいよ 私の寅さん』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 私の寅さん』は、1973年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第12作目。

監督はいつものごとく山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に岸恵子。

あらすじとしては、「小学校の級友と出会った寅次郎が、その級友の妹に恋をする」という物語になっている。

寅次郎は、夢を見ていた。

文明開化が起こった明治頃。菜種油を買い占めた富豪が「貧乏人は私のせいでランプも使えないのだ」といばり散らしていた。

ボロ屋で井戸水を汲んでいたさくらのもとに、富豪たちが詰め寄って、「お前の兄は国賊の寅次郎。もう少しすると絞首刑だ!」と脅しにかかる。

するとそこに寅次郎がやってきて、富豪たちを逃げ惑わせるのだった…。

寅次郎は、いつものように柴又へふらっと帰ってくるのだった。

しかし、とらやではさくらとひろしの計らいで、おいちゃんおばちゃんに九州旅行を計画していたのだった。その出発が明日で、寅さんはタイミング悪く帰ってきてしまったのだった。

次の日、寅次郎をおいて満男を含めた5人は九州旅行へ出発。

寅次郎はタコ社長、源ちゃんとともにとらやの留守番をすることになるのだった。

九州旅行一行が帰ってきてしばらくすると、さくらが江戸川の土手で変な男に付きまとわれるという事件が発生。

寅次郎は店前までやってきたそいつに殴りかかろうとするが、実はそいつは寅次郎の級友の柳文彦だった。

そして、さくらをつけていたのは、声をかけようとしたけれど逃げてしまったからだという。

すっかり昔馴染みの友達にあった寅さんは上機嫌。文彦の家に遊びに行くと、そこには文彦の妹のりつ子がいたのだった。

『男はつらいよ 私の寅さん(第12作)』は、寅さんの優しさがよくわかる作品だった

というわけで『男はつらいよ 私の寅さん』を見終わったわけだが…。

まず最初の感想としては、

「寅さんの優しさが表れまくってるなぁ」

ということである。

これまでの寅さんも、もちろん優しさを感じる場面というのは多々あったわけだが、今回はなかなかに寅さんの優しさがにじみ出ていると言っても過言では無い。

まず、九州旅行へ行ってきたとらや一行にお新香やシャケの切り身を用意し、挙げ句の果てには風呂まで沸かしているというこの優しさ。

柳りつ子にも、最初は機嫌悪く接していたのに、とらやに謝りに来た時にはころっと180度態度が変わる姿も寅さんらしい。

そんな寅さんの優しさが垣間見える作品かなぁと思った。

「良いお友達」に込められたパトロン的意味

『男はつらいよ 私の寅さん』のマドンナ、りつ子は、今作でこんなことを言う。

  • 良いお友達
  • パトロン

と。

男はつらいよは、一貫して恋愛をテーマの一つとして加えているのだが、今作ではその恋愛に対して、実に悲劇的な面持ちをしているように感じる。

それが、上記で挙げた「良いお友達」「パトロン」という二つの言葉である。

この二つの言葉は、かなり似通った意味を持つ言葉だということを『男はつらいよ 私の寅さん』を見て理解した。

というのも、まず「パトロン」というのは、芸術家で言うところの支援者のことである。

芸術家は、正直なところ作品が売れるまではお金さえ入ってこない職業だから、経済的な後押しが必要なわけである。

パトロンの言い方を変えれば「スポンサー」である。

つまり、りつ子にとって寅さんは、単なる支援者・理解者としての立場が大きかった。

物語中盤で「寅さんは私のパトロンね」とりつ子が言い、その意味を理解しないまま寅さんが嬉しそうにしているのが見ていてツライ。そう、その時点ですでに失恋をしていたも同然なのである。

そして極め付け。

物語終盤で、

「良い友達でいたかったのに…バカね寅さん…」

とさくらにこぼすシーンがある。

男にとってこれほどに衝撃的なシーンは無い。

良い友達になれそう…と言う女性の言葉は、暗に、

「私はあなたのことを恋愛対象として見ていないよ」

と伝えているのである。

良い友達でいたかったのに、りつ子に好意を持ってしまったからどこかへ行ってしまった寅さん。

「バカね寅さん」

とは、「恋すると周りが見えなくなってバカになる」という意味合いも込められているのかもしれない。

たった2つの言葉なのに、これだけズシーンと男心に乗りかかってくることもそうそう無い。

実に巧みなセリフまわしだと思った。

旅の辛さを語る、放浪人寅次郎

『男はつらいよ 私の寅さん』の前半では、とらや一行が九州旅行へいくシーンがあり、帰ってくる時に寅さんが食事と風呂の準備をして待っている…というところがある。

そのシーンで寅さんは、旅から帰ってきた時のホッとする感じ、そして旅の辛さなどを語り出す。

寅さんこそ、旅の辛さを知るものはないからである。

だから、寅さんは旅から帰ってくるとらや一行をもてなすわけだが、その時に寅さんははにかんでしまってなかなかとらや一行の方を見れない。

このかっこよさ、そして可愛さ。

寅さんにしかできない芸当である。

『男はつらいよ 私の寅さん』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 私の寅さん』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

うん、面白い。

ただ、全体として今作はちょっと間延びする感じがしてしまった。

特に後半部分。級友の柳文彦と出会ってからは間延びする感じがしてしまって、個人的に若干退屈だった。

その点を加味すると星4評価が妥当かな…という感じ。

ただ、相変わらずの寅さん節は横行しているので、面白くないわけがない。

『男はつらいよ 私の寅さん』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 私の寅さん』は、コメディチックな「男はつらいよ」が好きな人にはオススメである。

特に、それこそ『新・男はつらいよ(第4作)』のような、コメディ調が強い作品を好む人にはぜひオススメである。

終わりに

『男はつらいよ 私の寅さん』についてレビューしてきた。

余談だが、次作で2代目おいちゃんは降板するらしい。

初代から2代目に変わって、結構すぐに3代目に変わってしまうとは…。ちょっと寂しい。

ただ、3代目からはもう変わることなくおいちゃんを演じ続けてくれているので、その点は安心できるかもしれない…。