【ネタバレ感想】『新・男はつらいよ(第4作)』は、まるでコントのようなコメディ映画だった

ふぉぐです。

ついさっき、『新・男はつらいよ』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『新・男はつらいよ』ってどんな映画?あらすじは?

『新・男はつらいよ』は、1970年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズ第4作目である。

監督は小林俊一。脚本に山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に栗原小巻。

あらすじとしては、「競馬で大穴を当てた寅次郎が、とらや夫婦にハワイ旅行をプレゼント。しかし、旅行会社の社長がトンズラし、とらや夫婦と寅次郎、そしてひろしは、とらやの店で隠れるようにして過ごすことになる」という物語である。

いつものように時間が流れていく葛飾は柴又。

寅次郎の舎弟だったノボルは、今や旅行会社に勤めてカタギの生活。

とらや夫婦へ「ハワイ旅行なんてどうですか?」と営業に来るようになる。

いくのに30万かかるハワイ旅行なんて夢のまた夢ということで、とらや夫婦はハワイのポスターだけもらうのだった。

普段通りに働くとらや夫婦のもとへ、隣の工場長をしているタコ社長がやってくる。

タコ社長は「旅行先で寅さんを見た」ととらや夫婦に話し出す。

話によると、寅次郎は名古屋の競馬場で「ワゴン・タイガー(訳すと車・虎)」という、自身と同じ名前をした人間で言うところの50歳ぐらいになる老馬に有り金を託す。

タコ社長は当たりっこないと思っていたが、なんとそのワゴン・タイガーが1着となり、見事寅次郎の予想は的中。大穴中の大穴で、18万円を手にする。

タコ社長は「その金を持って柴又へ帰ろう」と言うが、寅次郎は、

「運がついてるのを逃すわけにはいかねえ」

と言い、勝った金をそのまま競馬につぎ込むのだった。

そして、寅次郎は見事100万円近くの金を得ることに成功。

名古屋からタクシーを飛ばし、柴又へ帰ってきた。

とらや夫婦にハワイ旅行をプレゼントすることになる。

だが、ハワイ旅行当日、旅行会社に勤めているノボルが真っ青な顔をしてやってくる。

話によると、旅行会社の社長が寅次郎の100万円を持って逃げてしまったと言う。

寅次郎はハワイに行くふりをして、とらやの店で過ごすことに決めたのだった。

『新・男はつらいよ(第4作)』は、まるでコントのようなコメディ映画だった

と言うわけで『新・男はつらいよ』を観終わった。

今作は、簡単に言ってしまえばコントのようなコメディ映画であり、私が好きなタイプの映画だった。

と言うのも、今作はまるでお笑い芸人が作るコントのように、ギミック的な要素が詰まっている。

「ハワイ旅行に行くはずだったのに、誰にもバレないように店で過ごす」

「ちょうどいい具合に泥棒が入ってくる」

「泥棒が「あれ?なんでストーブついてんだ?」と不思議がる」

などなど。

全体としてギミックが満載。

今までの男はつらいよにはないタイプの演出だったので、変わり種として面白かった。

一番悪いのは、金を持ち逃げした社長なのに

『新・男はつらいよ』では、ちょっとムカつくシーンがある。

それシーンが、泥棒がやってきて警察に捕まり、そのせいで店に隠れていたことがバレ…その後、身内で喧嘩が始まるシーンである。

どう考えても一番悪いのは、寅さんの金を持ち逃げした旅行会社の社長なのに。

寅さんはやはりバカである。

「見栄を張りたい」という気持ちがあったのはわかるけれど、この場合寅さんは悪くない。

金を持ち逃げした社長が悪いのだから、

「金を持ち逃げされて、ハワイに行けなくなった!」

と言うだけで、町の人々は納得してくれるはずだ。

なのに、それを言わなかった。

寅さんもバカだが、本質を見誤って「寅さんが悪い」ということにするとらや夫婦もバカである。

マドンナはやはり、どこか気品がある

男はつらいよを観ていて毎度思うのが、登場するマドンナにはどこか気品があるなぁ…ということである。

ぶっちゃけ、寅さんみたいなフーテン野郎を見れば、今の時代ならば、

「なんだあいつ」

と思われるのが関の山である。

しかし、男はつらいよに出てくるマドンナたちは、寅さんに優しく接してくれ、絶対に「寅さん気持ち悪い」とは言わない。

もちろん映画なので、そんなシーンを絶対に入れるわけがないんだけれど、マドンナとはやはりそういう優しいところがあってこそだなぁ…と思うのだ。

今作の栗原小巻にしても、マドンナとして最高の人選である。

美人で気品があり、それでいて優しい。

寅さんが惚れないわけがないのだ。

『新・男はつらいよ』は、シリーズ屈指の哀しい物語なのではないだろうか

『新・男はつらいよ』を観て思ったのは、

「シリーズ屈指の哀しい物語だなぁ」

というところである。

寅さんは、幼稚園児に混じるぐらいに先生に没頭していた。

どこからどう見てもやばいやつ。色ボケが過ぎて現代の言葉ではピー音が入る「キチ●イ」まで出てくるぐらいにヤベーやつになってしまう。

そんな寅さんを絶望に陥れる、マドンナの恋仲。

寅さんはまた、旅へ出て行く決意をする。

しかし、とらや夫婦は寅さんが暴れるのを恐れ、「寝たふり」をすることでその場をやり過ごそうとする。

寅さんは、とらや夫婦が寝ている部屋の襖を開け、

「どうか、長生きしておくんな」

と粋な言葉をかける。

そのまま旅へ出かけようとする寅さんだが、店のドアを開けた瞬間、冷たい風が吹き付けた。

「もう少ししてから出かけよう」とでも寅さんは思ったのだろう。

すると、とらや夫婦がもそもそと起き出し、寅さんのことを噂する。

寅さんに対して悪いことを言っていたわけではないが、

「あのまま寝たふりをしておかないと、あいつに悪いじゃないか」

という、2人の気配りを聞いてしまった寅さん。

その言葉を聞いた瞬間に、寅さんは店から飛び出す。寒い寒い夜の街を駆け抜ける。

フーテン暮らしにとって、「寒さ」とは気温のことだけではない。世間が見てくる目の冷たささえも、それは「寒さ」なのである。

寅さんは、「もう少しだけ、この暖かいとらやで休憩していこう」とでも思ったのだ。

しかし、とらや夫婦の「寅さんがいない時だけでる、寅さんへの心の声」を聞いた瞬間に、とらやにも居場所を感じなくなったのだろう。

「なら、外の寒さの方がマシだ」

そう思った寅さんは、店を飛び出たのだ。

この哀しさ。寅さんは寅さんなりに考えるところがあったのだ。

自転車の車輪がカラカラと空回りしている様子が、寅さんの恋模様を表していたのかもしれない。

『新・男はつらいよ』を総合評価するなら?

『新・男はつらいよ』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

個人的には大満足の1本だった。

全体として非常によくできたコメディ映画。マドンナ役の栗原小巻も素晴らしい。

寅さんらしさもしっかり出ていて、ダレることなく見れた1本だった。

だが、泥棒のくだりやそのあとの言い争いのくだりに腹が立ったので、その点を加味して星4評価とする。

『新・男はつらいよ』はどんな人にオススメ?

『新・男はつらいよ』は、ある程度「男はつらいよってこんな人物関係がある」というのを把握している人にオススメしたい。

例えば、

「ノボルって、だれ?」

みたいな人が『新・男はつらいよ』を見ても、若干説明不足感が否めないので楽しめないかもしれない。

その点は注意が必要だ。

終わりに

『新・男はつらいよ』についてレビューしてきた。

余談だが、前作の「男はつらいよ フーテンの寅」の上映開始が1970年の1月15日。

今作が1970年の2月27日。

わずか1ヶ月とちょっとの間で公開されているのである笑。

なんだこの猛烈すぎる速さは…笑。

その辺の早すぎるスパンも寅さんらしくて良いねぇ…なんて思ってしまった。

サイコーだぜ、寅さんよぉ。