ふぉぐです。
ついさっき、『男はつらいよ 寅次郎紙風船』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』は、1981年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第28作目。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に音無美紀子。
あらすじとしては、「テキ屋仲間の男が病気だというので、寅次郎が訪ねていく。すると、自分が死んだら嫁を引き取ってくれ…と頼まれる」という物語である。
寅次郎は夢を見ていた。
ノーベル医学賞を受賞した寅次郎は、病院でも名手としての手術の腕前を持っていた。
そこに、貧しい女性と病気の子どもが手術をしてほしいと寅次郎の元へ現れる。
ノーベル賞を受賞した寅次郎には、入れたくもない予定がぎっしりと詰まっていたが、そんなことは構わずに寅次郎は手術をしてあげるのだった…。
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とらやでは、タコ社長の知り合いの会社が倒産した影響で、コンピューターゲームを満男にプレゼントしていた。
ぽちぽちと遊んでいるところへ、寅次郎が帰ってくる。
寅次郎は満男へのお土産に紙風船を渡すが、「なにこれ?」と紙風船の存在を知らなかった。
慌てたとらやの面々は、紙風船で遊ぶが、寅次郎は機嫌を損ねて旅に出ると言い出す。
さくらは、咄嗟に「同窓会の案内が来てる」と寅次郎に告げると、寅次郎は意気揚々とその日に同窓会へと赴くのだった。
同窓会でみんなからつまはじきにされたであろう寅次郎は、酔った勢いで友達に暴言を吐いてしまう。
そのことを悔いたのか、次の日の朝早くに旅へ出てしまうのだった。
寅次郎は旅先で、家出した18歳の少女「愛子」と出会う。
愛子と共に嫌々ながらも楽しい旅をしていると、偶然テキ屋商売をしていたところに昔の仲間の嫁さんが挨拶に来る。
倉富光枝というそのお嫁さんが言うには、自分の主人は病気をして、もう長くないかもしれない…とのことだった。
寅次郎はそのことが気がかりになって、数日後にテキ屋仲間の元へお見舞いに行く。
すると、テキ屋仲間は、
「もし、俺が死んだら寅に女房を頼みたい」
と申し出てきた。
『男はつらいよ 寅次郎紙風船(第28作)』は、時代を反映したような作品だった
と言うわけで『男はつらいよ 寅次郎紙風船』を見終わった。
まず最初の感想としては、
「時代を反映しているなぁ」
という印象である。
今作では、ついにコンピューターゲームが作中に登場する。
そして、寅さんが満男にお土産で持ってきた紙風船は見向きもされなかった。
そう、それはまるで、寅さんのように。
寅さんが持ってきた紙風船を、寅さんのご機嫌をとるために遊ぶとらやの面々は、まさに寅さんを扱うかのように紙風船で遊んでいた。
そして、タコ社長も、
「今はロボットの時代だからね。従業員も全部入れ替えして、綺麗さっぱりしたいよ」
なんてことを言う。
同窓会に行った寅さんは、おそらくみんなからのけもののように扱われてしまったことだろう。
寅さんを家まで送り届けてくれた同級生も、最後には寅さんに怒ってしまう。
寅さんを慕っていた愛子も、最終的には兄と共に静岡は焼津へと帰ってしまう。
寅さんは1人になる。寅さんはいつも1人なのである…。
物と、人間
今作では、先ほども登場した「コンピューターゲーム」が伏線になっているように思っている。
と言うのも、今作の最後で光枝が寅さんに寅さんの意思を確認するシーンが印象的だ。
「寅さん、もしかして主人から何か聞きませんでした…?」
光枝の言葉にどきっとした寅さんは、
「ああ…あのことね、病人の言うことだから話半分で頷いてるだけだったよ」
的なスカしを入れる。
すると、光枝はこう続ける。
「よかった…まるで犬や猫のように引き取ってくれだなんて…」
と。
このとき、寅さんはハッとする。
自分がこれまで「所帯を持つかもしれない」と嬉々としていたのは、実は本当の愛ではない。
かと言って、テキ屋仲間のツネに対する敬意でもない。
それはひとえに、自分の快楽のための物だったのだ。
寅さんは所帯を持ちたい。所帯を持つからには、フーテンをしているわけにもいかない。それが逆算として就職にもつながり、最終的には選考で落ちてしまう。
寅さんは光枝の言葉を聞いた瞬間に、
「俺は人と物の区別もつかなくなってしまったのではないだろうか…」
と思ったのではないだろうか。
今作の冒頭で、タコ社長が言っていた言葉が深い。
さくら「(コンピューターゲームを持って)こんなもの、倒産しちゃったら一体どうするのかしら」
社長「こういうのはね、二束三文で売りさばくのよ。寅さんみたいな商売は、こういうところから商品を見つけてくるんだよ」
と。
倒産=夫がなくなる
と考えるならば、光枝は引き取り手のないコンピューターゲームと考えることができる。
しかし、光枝はコンピューターゲームではなく、1人の人間である。
意思もあるし、自由もある。何も喋らないし意思もないコンピューターゲームとは訳が違う。
倒産した会社のコンピューターゲームを売り歩くなら、テキ屋稼業がうってつけだ。
しかし、1人の女性を愛し続ける暮らしをするのならば、サラリーマン稼業がうってつけである。
もちろん「安定」という意味においてだ。
だから、今作の最後で寅さんは「選考落選」という形で、自分が置かれている現実を叩きつけられる。
コンピューターゲームに株を奪われてしまった、紙風船のように。
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。
やはり、「男はつらいよシリーズ」にほとんどハズレなし。今作も面白い。
ただ、個人的にはちょっとダレるようなシーン(テキ屋商売のあたりとか)が気になったので、その辺を加味して星4評価とさせていただこう。
ただ、全体としてはやはり面白いので、見る価値のある作品だ。
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』は、切ない気持ちになりたい人にオススメである。
今作、とにかく切ない。
「人の死」が物語の根幹にあるので、それに揺れ動く寅さんの心情を考えるととても切ない気持ちになってしまう。
ぜひ、一度は見ておいて欲しい作品である。
終わりに
『男はつらいよ 寅次郎紙風船』についてレビューしてきた。
余談だが、そういえば紙風船で遊んだ記憶がかすかにある。
私がまだ幼い頃、おばあちゃんが買ってきてくれて、母とおばあちゃんと3人で遊んだ…そんな記憶がある。
コンピューターゲームに株を奪われてしまった紙風船。
今やコンピューターゲーム自体も、どんどんと目まぐるしく変化していっている。
時代というのは、なかなかに残酷であり、時としてそれが良さでもあったりするんだなぁなんて…。
そんなことを考えてしまった。