ふぉぐです。
ついさっき、『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』は、1989年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第41作。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に竹下景子。
あらすじとしては、「自殺しようとしていた会社員の男性・坂口と知り合った寅次郎。ひょんなことから、坂口とともにウィーン旅行に行くことになる」という物語である。
ある日、寅次郎が田舎の電車に乗って車掌と談話していると、電車が急停車した。
車掌が電車から降りて様子を見に行くと、なんと線路の上に自殺した男性の死体が…。
と思ったら間一髪のところで電車は止まっていて、男性は死なずに済んだのだった。
自殺しようとしていた男性のことが心配になった寅次郎は、車掌とともに警察へ男性を連れて行った後、男性とともに旅館へ泊まって癒しの旅をすることにする。
その男性は坂口という名前で、有名な大企業の課長をしているものの、日々のストレスでどうやら精神的な病気(作中で正確に触れられてはいないが、恐らくうつ病)になっているようだった。
「どこか、お前さんの行きたいところはねーのかい?」
と寅次郎が坂口に聞くと、
「僕、ウィーンに行きたいんです。寅さんと一緒に」
という。
そしてすぐに飛行機のチケットを2人分とった坂口。
ある日、くるまやに寅次郎分のチケットが届き、くるまやの面々は仰天。
なぜ寅次郎がウィーンに行くのか…と家族会議をしているところへ、ひょっこり寅次郎が帰ってくる。
ことの経緯を話すと、くるまやの面々は「ウィーンに行くのはやめたほうが良い」という寅次郎を説得する。
寅次郎も、流石に外国へ行くのは怖いと思ったのか、聞き分けよく「断ろう」と決意する。
次の日、坂口がくるまやへとやってきて、
「さあ、ウィーンへ行きましょう」
と言うところへ、寅次郎がウィーンへは行かない…という話をする。
すると、急に顔色が悪くなった坂口。錠剤を何個も飲み始めて「寅さんも僕を裏切るんだ」と険悪な表情をする坂口に、寅次郎は不安になる。
そして、「ちょっと成田まで行って、うまい具合に丸め込んで帰ってくる」とさくらに言い、寅次郎は坂口を連れて成田まで向かうのだった。
成田まで向かった寅さんは、結局どうすることもできず、坂口とともに音楽の都・ウィーンへと出発してしまうのだった。
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路(第41作)』は、「病気」がテーマになる作品だった
というわけで『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』を観終わった。
まず最初の感想としては、
「今作は一貫して「病気」がテーマになっているな〜」
という印象である。
作中でも触れられている通り、まずは坂口が心の病気だった。
そして、ウィーンに来て坂口の病気がすっかり治ったかと思いきや、今度は帰る直前になって寅さんが病気になる。
「病気」というのはもちろん失恋のことである。
寅さんと一緒に東京へ帰って、実家がある岐阜へと行こうと思っていた久美子だったが、飛行機のチェックイン中にボーイフレンドであるヘルマンに「帰らせない!」と言われてウィーンへ残る決意をする。
寅さんは、坂口の心の病を治すためにウィーンへ来たはずだったのに、なぜか帰る時には自分が病気のような状態になってしまったわけだ。
そんな喜劇的な終わり方が、男はつらいよらしくて最高なのだ。
なぜ、坂口は「寅さんと来るんじゃなかった」と言っていたのに、最後には「寅さんのおかげ」となったのか
今作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』での不可解な点の一つとして、
「坂口が、寅さんをめんどくさい人だと思っていたのに、なぜか最後には寅さんのおかげと思っている」
というものがある。
日本のとあるみちのくで知り合った寅さんと坂口。
寅さんの自由な生き方に心底尊敬の念を抱いた坂口は、寅さんとともに旅へ行きたいと申し出る。
行き先はウィーン。寅さんの分までチケットを取って、寅さんが「行けねえ」というと、顔色を変えるぐらいに寅さんのことを尊敬していた。
しかし、ウィーンに行くと、坂口は寅さんのことをないがしろに…というとちょっと違うかもしれないが、
「なんであんな人とウィーンへ来たんだろう」
と言い出すのである。
そして、坂口はこうも自問自答する。
「俺はやっぱり病気だったんだなぁ…」
と。
しかし、寅さんと東京へ帰る頃には、以前のように寅さんを慕うようなそぶりを見せているのである。
この急な感情の移り変わりに「?」とクエスチョンマークが浮かんだ人も多いだろう。
ここを私になりに解説をしてみる。
もともと、寅さんは坂口にとって命の恩人である。
だが、命の恩人だけではなく、坂口は寅さんのその自由さに心底惚れたわけだ。
何者にもとらわれず(マドンナにはいつもとらわれるけど)、自由に行きていくその様は、サラリーマンとして毎日通勤電車で苦しい思いをしている自分とは別世界の人間なのである。
そんな坂口の考え方には、固定観念が強く出てしまっているのである。
「〇〇なら、▲▲しなければいけない」
というような強迫的な観念だ。
例えば、
「大学を出たら、大手企業に就職しなければならない」
と言った具合である。
しかし、寅さんにはそんな観念が(人情的なところは抜きにして)ほとんどない。
人情となると、
「困っている人がいたら、助けてやる」
という観念があるのが寅さんだが、「生き方」に関してはまさに「風の吹くまま気の向くまま」である。
そんな寅さんだから、ウィーンへ来ても自由放題。
それに比べ坂口は、
「ウィーンへ来たなら、美術館へ行かなきゃいけない」
というような考えを持っているのである。そう、さっき言ったような強迫的な観念だ。
だから、坂口にとってみれば、せっかくウィーンに来てるのにホテルで3日も過ごした寅さんが邪魔に思えてきたわけだ。
しかし、坂口はまたもや寅さんへの尊敬が復活していく。
それは、久美子のために東京へいく手配を坂口に相談したことである。
映画内ではその描写はないが、坂口的にみれば、
「困っている人を助けている」
という感覚になったのではないだろうか。まさに、自殺しようとしていた自分を救ってくれたあの時のように。
人を助ける行為には、己を何か(例えば時間とか、お金とか)を犠牲にしなければならないことがほとんである。
寅さんは、人を助けることで起こる犠牲を特に考えず、
「困っている人がいるから、俺は助けたいんだ」
という自由意志の元で人を助けるのである。
決して、強迫的に人を助けているわけではないのだ。
坂口は、こんな寅さんを見て、
「自分の時もああやって救ってくれたのか…」
と思ったのではないか…という私の考察であった。
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』を総合評価するなら、星5中の星5評価である。
個人的には大満足。
ウィーンの美しい街並みも見れたし、何より日本が似合う寅さんが海外でもあの格好をしている…という滑稽さがとても面白い。
全体的にサクサク進むし、何よりマドンナ役の竹下景子さんが美しい。
星5以外にありえない傑作ではないだろうか。
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』は、海外旅行を味わいたい人にオススメである。
男はつらいよは基本的に日本の原風景を楽しめることで有名だが、今作は舞台がウィーンなので、海外旅行気分を味わえる。
実に半分以上がウィーンでのシーンなので、ヨーロッパ気分を味わいたい人にはうってつけだ。
終わりに
『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』についてレビューしてきた。
どうやら、今作で夏・冬での年2作品上映は終わったらしい…。次作からは年の瀬の12月のみの公開となったようである。
さらに、次作からは寅さんの恋話ではなく、満男の恋話が主となるようだ。
なんだか…ついに男はつらいよも終わりに近づいてきたなぁ…という感じである。
前作ぐらいから言っているけれど、とてもさみしいものである…。