【ネタバレ感想】『男はつらいよ 葛飾立志篇(第16作)』は、変化球的作品だった

ふぉぐです。

ついさっき、『男はつらいよ 葛飾立志篇』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。




『男はつらいよ 葛飾立志篇』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 葛飾立志篇』は、1975年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第16作目。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に樫山文枝。

あらすじとしては、「あることがきっかけで勉学に目覚めた寅次郎が、とらやの二階に下宿しているマドンナに勉強を教えてもらうことになる」というストーリーである。

寅次郎は夢を見ていた。

時は西部開拓時代。大衆酒場で歌手として活躍していた女性は、この街のお尋ね者「タイガーキッド」の妹だった。

自身の兄がお尋ね者の人殺しだと言われている妹の元へ、タイガーキッドがふらりと現れ、敵を皆殺しに。

「ヴァージニアでおいちゃんとおばちゃんが髪を白くして待ってるわよ!」

という妹に「他人の空似よ」と言い残し、タイガーキッドは去っていくのだった…。

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ある日、とらやの元へ山形からの修学旅行生がやってきた。

その子は最上順子と言い、「車寅次郎という男性から毎年手紙をもらっていて、いつも500円が添えられている」と話すのだった。

するとそこへひょっこり帰ってくる寅次郎。

最上順子がとらやへきた理由は、自分の母は女手一つで自分を育ててくれたが、もしかして毎年手紙をくれる車寅次郎という人物が、自分の実の父親なのでは…と思い立った…ということだった。

そして、順子の母親のお雪さんは、既に亡くなってしまったことも教えてくれた。

寅次郎は、確かに順子の母親であるお雪さんに昔世話になったことがあったが、子どもができるような関係性ではないときっぱり否定。

順子はそのまま、友達と山形へと帰っていくのだった。

その日、とらやでは寅次郎の良い話で盛り上がっていたが、ひょんなことからいつものごとくケンカへ。プイッと柴又を後にする寅次郎だった。

山形へと商売へやってきた寅次郎は、亡くなったお雪さんの墓参りも兼ねて山形へときたのだった。

お雪さんの墓参りをしているところに、寺の住職と遭遇。

住職は、お雪さんが「私に学があったらこんなことにはならなかった…」と言っていたことを寅次郎に話す。

寅次郎はその言葉を聞き、自分も勉学に励むべきだ…と悟るのだった。

『男はつらいよ 葛飾立志篇』は、変化球的作品だった

というわけで『男はつらいよ 葛飾立志篇』を観終わったわけだが…。

今作の感想をまず言うなら、

「実に変化球的な作品だなぁ」

ということである。

なんだろ、めちゃくちゃ変化球である。

どこらへんが変化球だったのかを、私なりにまとめてみるとこんな具合だ。

  • ケンカをしてプイッと出ていく寅次郎を止めるでもなく、お金を渡して「また帰ってきてね」というさくら
  • 勉強をしたい!と言い出す寅さん
  • 寅さんと同じくらい癖の強い学者先生

今までの男はつらいよシリーズにはないような設定が盛られていて、

「あ、なんかいつもの男はつらいよとはちょっと違うな〜!」

と、個人的にワクワクさせてくれるような…そんな作品に感じた。

田所先生と、寅さん

『男はつらいよ 葛飾立志篇』での見所といえば、寅さんと同じくらい変わった人物である田所先生にある。

田所先生は、さくらが自宅でひろしに「こんなに変な先生だったのよ」と話をするぐらいにおかしな先生なわけだが…。

寅さんと田所先生、実に相性が良いらしい。

というのも、2人は同じ女性に恋をしていた。

そう、今回のマドンナ「筧礼子」である。

礼子の博識でしっかり者で聡明な人柄に、田所先生も恋に落ちてしまう。

一方寅さんは…というと、田所先生のように礼子と付き合いがあるわけでもないのに、礼子の美貌に惹かれて恋に落ちてしまう。

2人は似ているのだが、一つだけ違うところがある。

それは、寅さんの方が「恋」についてシンプルに考えていた点だ。

だから、田所先生は寅さんのことを「師」と呼び始めるわけだが、この関係性が実に微笑ましい。

そして、最終的には2人とも振られてしまう。厳密にいうと田所先生だけが振られたわけだが、寅さんも一緒になって旅に出てしまう。

この、似た2人が出てくるさまも、なんだか変化球的だなぁと思う所以である。

田所先生も、「顔で笑って、腹で泣く」

男はつらいよの主題歌の歌詞に、

「男というもの辛いもの、顔で笑って腹で泣く」

という一節がある。

今作では、寅さんだけではなく田所先生も、顔で笑って腹で泣いていたシーンがある。

礼子に手紙でプロポーズをして、その結果を電話で聞くという最高に胸を締め付けられるシーンである。

礼子は、別に田所先生のことが嫌いだったわけではない。

さくらからも、

「まるで親子見たいね」

と言われるぐらいに、息のぴったりあった…そんな関係性だったはずだ。

しかし、結果としては田所先生が振られてしまう。

その時の、電話越しではまるで「気にしていないよ」というような口ぶりが痛々しい。

だが、その痛々しさの中にも美しさがあり、男としての生きる道を据えているところがかっこいい。

そもそも、あんなにヒゲが生えて、とらやへ来る時もあんな泥まみれの格好をして、

「私は誰にどう思われようが知ったこっちゃない」

的な感じを醸し出している田所先生が、電話でプロポーズの結果を聞くというところに男して共感を覚えてしまう。

そう、男というのは得てしてそんな具合である。

ヒゲを蓄えてファッションに無頓着で、一つのことに打ち込んでいる男ほどそんな具合になってしまうのだ。

田所先生は恋に臆病。そこもまた、胸を打たれるシーンなのである。

『男はつらいよ 葛飾立志篇』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 葛飾立志篇』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

全体としてはまとまりがよく、途中の草野球シーンはとても面白かった。

また、最上順子が物語の扉を開いて閉じるところにも、なんとなく監督の粋な計らいが見える。

ただ、ちょっと個人的に間延び感が目立った印象があるので、その点を踏まえて星4評価と察せていただく。

『男はつらいよ 葛飾立志篇』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 葛飾立志篇』は、いつもの寅さんとはちょっと違う寅さんが見たい!…という人にオススメである。

スタンダードな寅さんというよりは、まさに変化球的な寅さんなので、見ていて楽しい。

終わりに

『男はつらいよ 葛飾立志篇』についてレビューしてきた。

余談だが、私は今回出てきた田所先生のような人物がかなりの好みである。

あんな風に、服に無頓着で自分のやるべきこと、自分の好きなことに打ち込んでいる人物に共感を覚えてしまうのだ。

田所先生役の小林桂樹さんは、どうやら2010年にお亡くなりになっているようだ。

低い声でどっしりと構えていたあの風貌は、かなりいぶし銀でかっこいいなぁと思う。

機会があれば小林桂樹さんが出演していた作品でも見てみようかな…と、そんな気持ちになった。

男はつらいよを見ていて思うのは、こんな風に昔の作品に対しての造詣も深くなっていくところに良さがあるなぁ…ということである。

小林桂樹さんに、ありがとうを。