【ネタバレ感想】『続・男はつらいよ(第2作)』は、前作とは違う悲しい物語だった

ふぉぐです。

ついさっき『続・男はつらいよ(第2作)』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『続・男はつらいよ(第2作)』ってどんな映画?あらすじは?

『続・男はつらいよ』は1969年公開のコメディ映画。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ(坪内夏子)は佐藤オリエ。

あらすじとしては、「あてのない旅へ行く途中、ふらっと立ち寄った恩師の家で一目惚れをした寅次郎。ひょんなことから警察沙汰になったりして、京都にいるという母親の元へ尋ねることになる」という物語である。

ふらっと葛飾柴又に戻ってきた寅次郎。

おじさんたちは出迎えるが、帰ってきてすぐに寅次郎は「旅に出るから、止めないでくれ」と出て行ってしまう。

寅次郎は北海道へ行く予定だったが、柴又から駅へ向かう道中で、勉強塾を開いているらしい家を発見する。そこで、昔お世話になった恩師を発見し、寅次郎は挨拶に行くのだった。

恩師宅で恩師の娘である「坪内夏子」に出会い、寅次郎は一目惚れ。旅のことなんてすっかり忘れ、恩師宅で酒を飲んでいた。

すると、急に胃痙攣を起こす寅次郎。救急車で病院で運ばれるが、病院でいつものように啖呵商売をするぐらいに復活。

先生から怒られ、ノボルとともに無銭飲食をし、警察沙汰に。

寅次郎は、「俺はもう、この街にゃいられねぇ」と恩師に言い残し、また旅へ出かけるのだった。

1ヶ月後、恩師と坪内夏子が京都で親子旅行をしていると、偶然寅次郎を発見。

寅次郎とともに旅館で一杯やっていると、寅次郎が、

「実は、京都には実の母親がいるらしいんです。」

と言い出す。

恩師は、「別に会わなくてもいい」と言う寅次郎に喝を入れ、娘の夏子とともに母親を探させるのだった。

『続・男はつらいよ(第2作)』は、前作とは違う悲しい物語だった

と言うわけで『続・男はつらいよ』を観終わった。

まず最初の感想としては、

「『続・男はつらいよ』は悲しい物語だなぁ…」

と言うことである。

スタンスとしてはいつもの寅さんなんだけれど、前作に比べると対照的なシーンがある。

前作『男はつらいよ』は、さくらとひろしの結婚が大きなテーマとなっていた。

しかし今作『続・男はつらいよ』では、「恩師の死」が大きなテーマとなっている。

寅さんに「母親に会わないと、きっと後悔する」と教えてくれたのは恩師である。

結果的には、母親は残酷な人間だったわけだけれど、それに対しても恩師は、

「子が大切じゃない親なんているものか。子を捨てるには、それなりの理由があったはずだ」

と、娘の夏子に説く。夏子にしてみれば寅さんの母親は残酷に映る。しかし、恩師から見れば親なりの見方があった。

その恩師も、最終的には亡くなってしまう。

最後に「うなぎが食べたい。江戸川で釣ってきてくれ」と寅さんに頼むシーンが印象的だ。

最後のワガママ。それぐらい許してくれ。

そんな恩師の言葉が聞こえてきそうなシーンである。

恩師が亡くなるというショックに加え、葬式で失恋も経験してしまう寅さん。

失恋に関してはいつものことなんだけれど、「人生で一番悲しいものは、別れの死だ」と教えてくれた先生が亡くなってしまうことも相まって、一層悲しい物語に出来上がった今作だと私は思った。

寅さんらしい、母親との再会

『続・男はつらいよ』での印象に残るシーンといえば、寅さんが実の母親と再会するシーンである。

だが、この再会シーンが実に寅さんらしくて良い味を出してるなぁ…と思った。

普通なら、最初に母親だと勘違いしていた優しそうなおばさんを母親として出すところである。

しかし、寅さんのあのぶっきらぼうな感じから想像しやすい母親が出てくる。

「そりゃそうだ笑。こっちが寅さんの母親じゃなきゃな!」

と、我ながら妙に納得してしまった…笑。

寅さんのようにぶっきらぼうで、ちょっとキツめなところもあって…。

残酷な印象が目立つけれど、最後のシーンでは息子である寅さんと仲よさそうに歩くシーンなんかは、

「ああ、本当は優しい人なんだな」

と思ってしまった。

心からの悪人なんてものは、私は存在していないと思っている主義である。

Aから見たBという人間は、悪い人間に見えるかもしれない。

しかし、Bの立場で考えてみると、Bにとってみればそれは正義かもしれない。

戦争で考えるとわかりやすい。

太平洋戦争で、日本が米国を攻めるのは、日本からみれば正義である。

しかし、米国から見れば日本は悪である。

そんな感じだ。

寅さんの母親も、おそらくお金で苦労をしたのだろう。

だから、「銭目的できたならやらんぞ」と言ったのだ。

寅さん達から見ればそれは悪だったが、母親から見ればそれは正義だった。

哲学的な要素も入り混じる寅さんは、考えが膨らんでいくところもまた楽しみのポイントである。

「止めてくれるな」と、誰も止めていないのに言う寅さんが滑稽で面白いのである

『続・男はつらいよ』で一番笑ったのが、

「止めねえでくだせえ」

と、京都へと旅に行くときに恩師に言う寅さんの一言である。

「あっしはもう、この街にゃいられません…」

と、旅に出る決意を言った瞬間、恩師はまだ一言も喋ってないのに即座に、

「止めねえでくだせえ」

と言っちゃう寅さんが滑稽であり、そこが「男はつらいよ」という作品の面白いところである。

側から見れば、

「止めて欲しいんだろうな」

というのは即座にわかる。

しかし、寅さんはあえてそれを口にすることで、人間臭さを演出し、なおかつ笑いを演出することに成功しているのである。

寅さんは、「とらや」のおじさんおばさん夫婦からすれば、ぶっちゃけ厄介な存在である。

だから、寅さんを止める気なんてサラサラないのに、

「止めねえでくれ」

と言う寅さん。

このシュールな演出は、寅さんという人物あってこそのものなんだなぁ…と痛感した。

『続・男はつらいよ』を総合評価するなら?

『続・男はつらいよ』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

うん、今作も面白い。

前作に比べるとちょっとはちゃめちゃ感が強くなって、ストーリー的にわかりにくいところがあったんだけれど、それを抜いても面白い作品に変わりはない。

寅さんの憎めない感じ。警察沙汰を起こしてしまうあたりなど、「人間的にどうなん?」と思われても仕方ないところだが、それもまた、寅さんの魅力なのかもしれない。

最終的に悲しい物語となってしまう今作だが、そのギャップがまた良き作品としての地位を確立してるなと思った。

安定の面白さなので、星4評価である。

『続・男はつらいよ』はどんな人にオススメ?

『続・男はつらいよ』は、前作『男はつらいよ』を見た方にまずはオススメしたい。

だが、『続・男はつらいよ』から見始めても正直全然問題ないぐらいに面白いので、気になる方は『続・男はつらいよ』から見ても大丈夫だ。

終わりに

『続・男はつらいよ』についてレビューしてきた。

余談だが、『続・男はつらいよ』は1969年の映画である。

1960年代には、まだ蒸気機関車があったんだなぁ…と、時代を感じるものがたくさん出てくるので、そういう点でも「男はつらいよ」は楽しめる映画なんだなと思う。

私は結構博物館に行くのが好きで、たまーに東京は両国にある「江戸東京博物館(江戸博)」に足を運ぶことがある。

江戸博には、江戸時代の庶民の生活はもちろん、それこそ戦前戦後の物や、まさに寅さんに出てくるような1960年代の物がたくさん展示されている。

寅さんを見ていると、江戸博で見たようなものが「生活の一部」として登場するので、

「ああ、本当にこういうものを使って生活してたんだなぁ」

と感慨深くなる。

特に『続・男はつらいよ』で私が「ハッ」と思ったのが、恩師宅でテーブルを囲んで酒を飲んでいるシーンの奥に写っている「花柄のポット」である。

時代を感じるものがたくさんあって、1960年代を生きたわけではないのに、なぜか懐かしい気持ちになる私なのだった。