【ネタバレ感想】『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌(第26作)』は、寅次郎の恋愛感情が無い不思議な作品だった

ふぉぐです。

ついさっき『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』は、1980年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの26作目。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に伊藤蘭。

あらすじとしては、「テキ屋仲間が亡くなっていたことを知った寅次郎が、墓参りに北海道を訪ねる。すると、その仲間の娘が東京の高校へ通いたいと言う」という物語になっている。

寅次郎は夢を見ていた。

柴又村では水害が起こり、助けをもらいにお代官の元へ行くと、村一番の美女を差し出せ!という乱暴な条件を突きつける。

困っている村人たちの元へ、虚無僧の格好をした寅次郎が現れ、悪代官たちを成敗するのだった。

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さくら夫婦は、おいちゃんおばちゃんやタコ社長の助けをもらい、ついに一軒家を購入した。

するとそこへ寅次郎が帰ってくる。さくらたちの新居を見るために、寅次郎はさくらとともに出かけるのだった。

さくらたちの新居には、さくら夫婦の部屋と満男の部屋の他に、もう一つ部屋があった。

その部屋は、さくらによると寅次郎の部屋だというのだ。

思わぬところで人の優しさに触れた寅次郎は、とらやへ戻ってくるなり、ひろしとさくらのために新居祝いを送ることにする。

源公から借りた2万円を納め、ひろしに渡すと、その額にびっくりしたひろしは「受け取れません」と拒否する。

その態度に怒った寅次郎。タコ社長の余計な一言が火に油を注ぎ、大げんかになった末寅次郎はプイッと出ていくのだった。

寅さんは北海道にいた。テキ屋商売をしていると、いつものテキ屋仲間の姿がない。聞いてみると、なんとそのテキ屋仲間は亡くなってしまったのだという。

寅次郎は線香の1本でもあげたいと思い、そのテキ屋仲間の出身である北海道は奥尻島へと足を運ぶのだった。

奥尻島では、テキ屋仲間の娘であるすみれと出会い、仲良くなるのだった。

聞くところによると、どうやらすみれは生活費を稼ぐためのアルバイトのせいで高校を中退せざるを得なくなってしまっていた。

そのため、東京の定時制高校へ通いたい…という思いがあり、その旨を寅次郎に打ち明けるのだった。

いてもたってもいられなくなった寅次郎は、ついにすみれを連れて東京へと戻ってくるのだった。

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌(第26作)』は、寅次郎の恋愛感情が無い不思議な作品だった

というわけで『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』を観終わった。

まず最初の感想としては、

「今作はとても不思議な作品だなぁ」

ということである。

今作では、なんと寅さんの恋愛模様がないのだ(ごめん、実は少しあるけど)。

すみれに恋愛感情でも抱くのかな…と思いきや、そんなわけでもない。

おそらく寅さんとすみれじゃ歳も20歳ぐらい離れているだろう。

さらに言えば、寅さんが語っていた、そのテキ屋仲間の言葉で、

「絶対にすみれはテキ屋のカカアにはしねえ。大学出で真面目のサラリーマンに嫁がせるんだ…って言ってたぜ」

というのもある。

つまり、今作において寅さんそのものにおけるマドンナは存在せず、これまでの寅さんシリーズとは一線を画すような不思議な作品だったのはいうまでもないだろう。

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』は、「もし寅さんに子どもがいたら…」という視点で見ると面白い

今作は、先述のようにいつもの恋愛寅さんではなく、むしろ「父親」としての側面が強い。

実際、劇中でも「俺はあいつの父親がわりだ」なんていうセリフがある。そう、今作で寅さんは父親としての役割を果たしているのだ。

そう考えてみると、今作の寅さんの対すみれにおける行動の数々は、娘を心配するお父さん…として鑑みることができる。

すみれが菊池貞夫(北海道の友人)と一晩をともにして帰ってきた時のあの剣幕は、まさに娘が心配で心配でたまらない父親のそれである。

そして、寅さんはふと気づく。

すみれに自分は少しだけ恋をしていたこと、そして自分はすみれの父親ではないことを。

「私、その人と結婚するんだもん」

とすみれに言われた時の寅さんの表情が切なく、そしてまた味わい深い。

そう、寅さんは…すみれとは赤の他人なのだ…。

自分の境遇を理解した寅さんは、すぐにとらやの二階へと駆け上がる。

そして、追ってきたさくらにこう言う。

「俺はすみれがあんなふしだらな子だとは思わなかったよ」

寅さんの必死の抵抗であり、やけくそであり、言い訳である。

すみれはもう、さくらが言うように大人である。それに赤の他人である寅さんにそんなことを言われる筋合いはない。

つまり、このセリフの裏には寅さんが少しだけすみれに対して恋愛感情を持っていたことも垣間見えるわけだ。

そのあと、

「寅さん、怒らないで」

とすみれが言った後の寅さんのセリフもまた、味わい深い。

「おめえ、幸せになれるんだろうな。幸せにならなかったら承知しねえぞ」

このセリフからも、多少なりとも寅さんがすみれに恋愛感情を抱いていたことが見える。

もし、寅さんが父親の視点ですみれを見ていたのだとすれば、

「仲良く暮らすんだぞ」

と言うのが常である。そう、まさにさくらとひろしに言うセリフと同じだ。

しかし、寅さんは「幸せになれるんだろうな?」と、すみれに幸せになることを強要している。

恋愛で振られた男の言う言葉…なのである。

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

個人的には結構評価高めでもおかしくないぐらいの作品である。

前作の「ハイビスカスの花(25作)」が強すぎて、その影に埋もれてしまっている感が否めない今作だが、個人的にはハイビスカスも良かったが今作もそれに勝るとも劣らないぐらいの作品だったように思う。

ただ、いつものごとくとらやの面々が寅さんの扱いに不慣れすぎているのが見ていて不愉快になってしまったので、その点を加味して星4評価とさせていただこう。

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』は、いつも同じパターンが続いている「男はつらいよシリーズ」で、ちょっと趣向を変えたものがみたいな…という人におすすめである。

今作はこれまでの作品とはだいぶ違う感じがするので、見ていて飽きることはないだろう。

終わりに

『男はつらいよ 寅次郎かもめ歌』についてレビューしてきた。

余談だが、今作で第2作から満男役を演じていた中村はやとが降板する。

男はつらいよシリーズを見ていると、1作ごとに大きくなっていく満男が楽しみでもあったけれど、次作からは吉岡秀隆に変わってしまうのが少し寂しい気もする…笑。

ただ、吉岡秀隆版の満男もそれはそれで楽しみなので、期待して次作を見ていこうと思う。