ふぉぐです。
ついさっき、『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』は、1984年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第33作。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に中原理恵。
あらすじとしては、「旅先で出会ったフーテンの風子。その境遇に似たものを感じた寅次郎は、風子と少しだけ旅をするようになるが…」という物語である。
寅次郎は夢を見ていた。
ギャングが取り仕切る、ステージのあるバー。そこに、寅次郎が現れる。
寅次郎は、ギャングの親玉を復讐のために殺そうと、銃を持ってやってきた。
寅次郎が店に入ったことで、それまで歌や踊りでうるさかった店内が静まり返る。
寅次郎は、ウィスキーを飲み終えた後、ギャングと対決することになる。
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満男が中学に入学することになる。御前様やタコ社長などから入学祝いをもらっていると、とらやのもとに小包が届く。
それは寅次郎からの入学祝いで、中には小さめの地球儀が入っていた。
発送場所は盛岡。これから夏になって暑くなるため、寅次郎は北へ北へと北上していっているのだった。
寅次郎が青森は八戸のお祭りで商売をしていると、盃を交わした兄弟であるノボルと偶然にも出会う。
ノボルはすでにテキ屋稼業を引退し、結婚。小さな娘をつれながら、親子共々定食屋のようなお店を構えているのだった。
ノボルと別れた寅次郎は、北海道へと向かう。北海道の床屋で髪を切っていると、若い女性が床屋で雇ってくれるように頼みにやってきた。
しかし、店主は娘を帰してしまう。
寅次郎が髪を切り終えてブラブラとしていると、さっきの娘を発見。
寅次郎が近寄って話しかけると、その女性は「風子」という名前で、みんなからはフーテンの風子と呼ばれているのだという。
気が強いけれど内面は優しい風子に親近感を得た寅次郎は、風子を食事に誘うのだった。
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎(第33作)』は、シリアス展開な作品だった
というわけで『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』を観終わった。
今作の感想をまず最初にいうなら、
「かなりシリアスな展開だなぁ〜…」
ということである。
今作、ぶっちゃけると笑いの量が多くはない。
全体としてシリアスな場面が続いていき、最後に寅さんが熊に襲われるシーンはコメディ要素満載なのだが、それ以外はシリアス展開の連続である。
正直、いつもの寅さんを期待して見てしまうと意表を突かれる作品だなぁと思った。
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』は、「普通の幸せ」を描いている
今作で特筆すべきなのは、これまでの男はつらいよシリーズに比べ、「普通の幸せ」について描いている点である。
今作では、寅さんの周りの人々の生活に徐々に変化が現れるのが目に見える。
- 満男が中学へ入学
- タコ社長の娘のあけみが結婚
- ノボルがテキ屋稼業を卒業して結婚
などである。
特に、今作の寅さんにとってショッキングだったのが、ノボルの境遇ではないだろうか。
ノボルは、自分と同じ道を歩んでいたはずなのに、いつの間にか渡世人から足を洗ってカタギの生活になっていた。
寅さんにとってみればそれは喜ばしいことである。渡世人として生きていく自分をいつもあざ笑っている寅さんにしてみれば、ノボルがカタギとなったのはめでたいことでもあり、同時に寂しいことでもあったのだ。
そんな寅さんは、マドンナである風子が渡世人であるトニーと一緒になろうとしていることが我慢ならなかったのだ。
そして、自分の思いを優先させてしまい、トニーの元へ直談判しにいく。
風子にとってみればそれは余計なお世話だったわけだが、寅さんからしてみればこれほどまでにない良いことだったわけである。
「普通の幸せ」を手に入れているさくら・ひろし・おいちゃん・おばちゃんも、寅さんの肩を担いでいることから「普通の幸せ」がどんなに素晴らしいことかを説きたいはずである。
そして、結局風子はカタギとしての人生を歩み始めることになる。
フーテンから、カタギの風子に変わったのであった。
今作の「雷」は、風子の悲しみか
男はつらいよシリーズにありがちな演出として、物語後半で雷や雨が降るシーンがあるのだが、今作もその例に漏れず雷が鳴り響く。
今作の雷を自分なりに分析したところ、おそらく風子の感情を示したものだと思うのである。
雷がなり始めたころ、風子はトニーの元へと行こうと準備をしていた。そこにさくらがやってきて、風子の事情を聞く。
この時の雷は、風子にとっては「緊張」としての側面が強い雷だっただろう。怒りや悲しみなどの喜怒哀楽ではない。
しかし、寅さんが自分のためと称してトニーの元へ直談判をしに行った直後から、雷が大きく鳴り響く。風子は怒りを感じたのだ。
と同時に、悲しみも感じた。
「寅さんならなんでもわかってくれると思ったのに」
というセリフからもその様子が伺えるだろう。
風子のやるせない気持ちは、雨となって表現される。土砂降りの中をいく風子がさくらに託した言葉は、
「寅さんに、ごめんと謝ってください」
だった、
雷が止んで、雨が降ったのはこの感情の変化を表現したかったからではないだろうか…。
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』を総合評価するなら、星5中の星3評価である。
うーん、個人的には普通かな。決して面白くないわけではないんだけれど、これまでの作品と比べると(特に前作の第32作と比べてしまうと)見劣りする感は否めない。
最後、寅さんが熊に襲われるシーンはコメディチックで面白かったが、蛇足といえば蛇足である。
また、トニーと風子の関係性、風子の気の移り変わりなどが今作はよく見えなかった。
そのため、風子に感情移入しにくく、また寅さんの境遇にもあまり踏み込めない感があったので、星3評価とさせていただく。
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』は、男はつらいよのシリアス回が好きな人にオススメしたい。
今作は特にシリアスな展開が続くので、そういうのが好きな人にはオススメである。
終わりに
『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』についてレビューしてきた。
今作を最後に、ノボルの出演はないようだ。
男はつらいよシリーズの前半、そして今作と…源ちゃんに比べて出演回数が少なかったノボルだったが、今作で見納めとはちょっと悲しい。
カタギとなったノボルにとって、寅さんという存在は邪魔でしかないのかもしれない。
そんな儚い人間物語も、なかなか悪くはないものだ。