ふぉぐです。
ついさっき、『男はつらいよ 噂の寅次郎』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう・。
Contents
『男はつらいよ 噂の寅次郎』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 噂の寅次郎』は、1978年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第22作目。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に大原麗子。
あらすじとしては、「旅先で出会ったひろしの父に今昔物語の教えを諭された寅次郎が、とらやへ戻ってくる」という物語である。
寅次郎は夢を見ていた。
百姓の娘であるおさくは、四角い顔をした「寅地蔵」にお供え物をして拝んでいる優しい娘だった。
そんなおさくの家には借金があり、ついにおさくが借金のかたに妾になる決心をしてしまう。
するとそこへ、どこからともなく現れた高僧の格好をした人が現れた。
その人は寅地蔵の化身で、借金のあるおさくの家に大判小判を降らせるのだった…。
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上野へ用事があった寅次郎は、どこからともなく「お彼岸」ということを聞き、柴又にある実父の墓へと墓参りにやってきた。そこをおいちゃんおばちゃん、さくら、御前様に目撃され、そのままとらやへとやってくるのだった。
とらやへ戻ってくると、タコ社長が行方不明になってしまっていて、寅次郎はもしものことを考えて通夜の準備をしようとしていた。そこに上機嫌に酔っ払ったタコ社長が帰ってきて、もちろんのごとくケンカへ。次の日の朝にプイッと柴又を後にする寅次郎だった。
旅先で妙なお坊さんに「女難の相が出てる」と言われた寅次郎。その後、とあるダムで「瞳」という女性と出会い、慰めるのだった。
瞳と別れ、木曽へとむかうバスに乗り込んだ寅次郎。後ろの席には、偶然にもひろしの父が座っていて、そのまま一緒に温泉宿へと宿泊することになる。
寅次郎が女性と遊ぼうとしている最中、ひろしの父は寅次郎に「人生と恋愛の儚さ」について、今昔物語を引用しながら諭す。
それを聞いた寅次郎は、自らの人生と恋愛についてしみじみと考えを巡らし、次の日の朝早くに柴又へと出発するのだった。
寅次郎が柴又へ着くと、とらやでは新しい従業員を雇っていた。
その従業員は荒川早苗という美しい女性で、寅次郎は夢中になってしまうのだった…。
『男はつらいよ 噂の寅次郎(第22作)』は、今昔物語と現実が相対した作品だった
というわけで『男はつらいよ 噂の寅次郎』を見終わった。
まず最初の感想としては、
「今昔物語と現実が相対してるな」
ということである。
今作で個人的に印象強かったのは、
- 女難の相
- 今昔物語
- 荒川早苗
の3つだ。
特に今昔物語は今作『男はつらいよ 噂の寅次郎』においてかなり重要な役割を果たしている。
今作で語られた今昔物語のストーリーとしては、
「美しい妻を嫁にもらった幸せ者の旦那がいたが、重い病にやられて妻は死去。妻の美しい姿が忘れられない旦那は、妻が眠る墓を掘り返してみると、そこにはかつての美しい妻ではなく、見る影も無い骸骨があった。そのことでショックを受けた旦那は、頭を丸めて出家する」
というものである。
寅さんはこの物語に感銘を受け、ひろしの父の今昔物語とお金を拝借して柴又へと帰郷する。
そして、今昔物語のストーリーをとらやの面々へと聞かせる…というわけだ。
ここまで聞くと特に大した繋がりもないように思うのだけれど、今作のマドンナ荒川早苗は、物語中盤ぐらいで苗字が荒川から水野に変わる。
そして、とらやの面々に、
「私、もう荒川じゃなくなったんです…」
と告げる。
そう、荒川早苗はもう戸籍上は存在しなく、「水野早苗」が存在することになったわけだ。
水野早苗になった彼女に対して、昔から惚れていたいとこの添田は意味深な言葉を残して去っていく。
まるで今昔物語のように…。
なぜ、寅さんは出て行ったのか
今作『男はつらいよ 噂の寅次郎』では、いつもの「男はつらいよ」のように明確に寅さんが失恋したシーンはない。
いとこの添田にだって、マドンナの早苗は「あの人の気持ちはわかってたの」と、特に一緒になりたいと思っているような言動はなかった。
なのに、今作の寅さんは「また明日!」と言って添田を追って駅まで行った早苗を見送った後すぐに旅へ出てしまう。
個人的にはこの点が不可解だった。
別に失恋しているわけじゃないし、添田に対して早苗がどう思っているかは明白だった。
寅さん自身にも十分芽があるかもしれないのに、なぜ寅さんはとらやを後にしたのだろうか。
個人的にこの真意は、添田の心理を寅さんが汲み取ったことにあるのだと思う。
寅さんは、添田が早苗に惚れているのを、とらやに添田がきて嬉々として昔の早苗の話をするまでわからなかった。
そう、早苗が新しいアパートに引っ越した時に、添田は早苗の荷物をアパートまで届けてくれる運送業のようなことをしてくれていた。
あのシーンで、添田は早苗に好意を寄せているようなそぶりを見せている。
しかし、寅さんにはわからなかった。そして、とらやに添田が来た時にやっと理解したのだ。
そして寅さんは思ったはずだ。
「だから添田は、早苗ちゃんのアパートに荷物を送ってやっていたんだ」
と。
この不甲斐なさ。そして「自分」という恋敵が現れたことに対する添田の気持ちを理解したわけだ。
添田の気持ちを知ってしまった以上、自分が早苗と一緒にはなれない。
別に「一緒になってはいけない」なんて法律があるわけではないが、添田の気持ちを考えるとそんなことはできない。
前前作(第20作)で、マドンナ島田藤子の弟であるワット君が、恋愛についての意見を藤子にぶつけるシーンがある。
「寅さんは姉ちゃんに惚れとるばい。姉ちゃんは寅さんのこと好きなんか?」
と。
それを聞いた寅さんは、次の日に旅へ出てしまう。
寅さんは、自分がたくさん失恋をしてきたからこそ、好きになった女性と結ばれることなく、別の男と結ばれてしまうのを知る男性の気持ちがわかる。
今作の寅さんはまさにその象徴であり、映画を見る限りでは不可解ともとれる行動をとったのだと私は推測している。
『男はつらいよ 噂の寅次郎』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 噂の寅次郎』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。
やはり、安定の面白さ。今作のマドンナ・大原麗子さんこそが、全作品のマドンナの中で最も美しいとする男性を多いようである。確かに美しい女性である。
全体としてコメディ要素も強く、笑って見れる箇所もたくさんあったので高評価い値する。
ただ、個人的にはちょっとダレるシーンがあったりしたので、その点を加味して星4評価とさせていただこう。
『男はつらいよ 噂の寅次郎』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 噂の寅次郎』は、大原麗子さんの美しさが際立っている映画なので、大原麗子さんファンにはオススメである。
また、コメディ要素も強くサクッと観れてしまうので、
「男はつらいよで次は何を見ようかな〜」
と思っているそこのあなたにもおすすめだ。
終わりに
『男はつらいよ 噂の寅次郎』についてレビューしてきた。
余談だが、今作のマドンナ・大原麗子さんは、どうやら2009年にお亡くなりになったらしい。
wikipediaの情報で申し訳ないが、こんな文があった。
2009年8月6日、連絡が取れず不審に思って警察に通報していた実弟らによって、自宅で死亡しているのが発見された。62歳だった。自宅2階の寝室の床の上で仰向けに倒れて死亡した時、携帯電話を取ろうとして手を伸ばした状態だった。携帯電話までの距離はわずか15センチで、もしこの時携帯電話に手が届いて電話をかけていれば、救助されて死なずにすんだ可能性もある。
(Wikipediaより:大原麗子)
もし15センチ届いていれば、大原さんは今でも現役だったかもしれない…。
大原さんがもうこの世にはいないことを知って、なんだか旅にでも出たいような…そんな、どこぞのフーテンのような気持ちになってしまった。
アタッシュケースを持って、汽車にでも乗りますか。