【ネタバレ感想】『男はつらいよ 寅次郎夢枕(第10作)』は、いつもより切なさが強い作品だった

ふぉぐです。

ついさっき、『男はつらいよ 寅次郎夢枕』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』は、1972年公開のコメディ映画。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に八千草薫。

あらすじとしては、「柴又に帰ってきた寅次郎が、幼馴染の志村千代に好意を持つが、実は千代の方も寅次郎に好意を持っていた」という物語である。

寅次郎は夢を見ていた。

喫茶店で女給をしているさくらのもとに、生き別れた兄である寅次郎が颯爽と現れ、悪い奴らを懲らしめ、自分も警察に捕まる…というものだった。

寅次郎は柴又へ帰ってくる。

柴又では、寅次郎は「いい加減にしないと、寅さんみたいになるよ!」と子どもを叱る母親がネタにするぐらいの笑い者となってしまっていた。

柴又での自分の扱いにゲンナリした寅次郎は、とらやへと帰ってくるもどこか疑心暗鬼になっていた。

とらやへ帰ってくるなりいつものようにどんちゃん騒ぎになりかけたが、今回はとらや夫婦&さくら&タコ社長の計らいで、寅次郎は自分の立場を心配し、カタギの生活に戻ることを決意した。

次の日、タコ社長、さくら、そしてとらや夫婦がカタギ生活の第一歩として寅次郎の嫁探しを始める。

しかし結果は惨敗。柴又で寅次郎の名前を出すと、即座に結婚を断れるような状態になってしまっていた。

その現状を知った寅次郎は、柴又を後にし、また旅へと出るのだった。

旅先の旅館で、寅次郎はノボルと出会う。

いつものようにノボルとテキ屋商売をしていたが、寅次郎はすぐにノボルと別れ、また柴又に帰ってくるのだった。

柴又では、御前様の親戚にあたる大学助教授が、とらやの2階を下宿として使うために引っ越し作業を行なっていた。

引っ越し作業が終わるころ、おいちゃんは「嫌な予感がする」と呟く。

大学助教授とともにとらや夫婦&さくら夫婦がご飯を食べているところに、寅次郎が帰ってくるのだった。

『男はつらいよ 寅次郎夢枕(第10作)』は、いつもより切なさが強い作品だった

というわけで『男はつらいよ 寅次郎夢枕』を観終わった。

まず最初の感想としては、切なさが半端じゃなさすぎる映画だったように思う。

今作では、寅さんは八千草薫演じる志村千代に恋愛的な好意を抱かれる。

これまでの男はつらいよシリーズに出てくるマドンナたちは、寅さんに好意を持ってはいるけれど、いわゆる友達としての好意であって、恋愛的な好意ではなかった。

しかし、今作のマドンナ・志村千代は、寅さんが大学助教授とお千代をくっつけようとする言葉をプロポーズだと捉え、

「とらちゃんなら…」

とOKを出すぐらいに寅さんへ好意を抱いていた。

寅さんは大学助教授との交際をOKしたものと思っていたが、実は自分と結婚することに対してOKをしたお千代に唖然とする。こんなことは今までなかったからだ。

そして最後のシーン。

「寅と結婚するかい?」

と笑いながらお千代に喋るとらや夫婦&タコ社長&ひろしに、

「あら、なぜ笑うの?私、寅ちゃんなら結婚してもいいわよ」

と言う。

今作の最初のシーンで、寅次郎は柴又の笑い者にされていた。

しかし、最後のシーンでお千代は寅次郎を笑い者として扱いはせず、結婚してもいいというほどに好意を抱いている。

この帰結が今作は切なく、またその場に寅次郎がいなかったのも切ないのだ。

おそらく寅次郎は、

「柴又でこんな笑い者にされている俺と結婚したんじゃ、お千代に悪い」

という気持ちがあったのだろう。

だから、お千代がまさか自分にここまで好意を抱いていることに唖然とし、またその気持ちを受け止めることができなかったのである。

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』は、マンネリ打破作品でもある

今作は、これまでの男はつらいよシリーズとは毛色が異なる。

というのも、今作では寅さんにとって恋敵のような大学助教授が現れる。

実際、これまでの男はつらいよシリーズでも、寅さんにとっての恋敵はいつでも現れていた。

それは、マドンナたちの亭主となる人物たちである。

しかし、今作はその逆で、大学助教授は寅さんと同じ目線でお千代と接することになる。

だが、結果は惨敗。お千代にとって大学助教授はこれっぽっちも好意を持っていなかった。

だが、肝心の寅さんも、お千代の好意を受け止めることができなかった。

これまでの男はつらいよシリーズではなかなかに珍しいストーリーであり、またカメラワークもこれまでとはちょっと違うような…と思うようなシーンが多々あった。

それらが良い悪いは置いておいて、これまでの「男はつらいよシリーズ」のマンネリを打破するような作品なのはいうまでもない。

学歴への、アンチテーゼか

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』では、面白い具合に「学歴」へのアンチテーゼが盛り込まれていると感じた。

というのも今作の前半では、寅さんはとらや夫婦やタコ社長らの助けによって、所帯を持つ覚悟で縁談を待っていた。

しかし、そのどれもが空振り。

最後にとらやへかかってきた電話の主も、寅さんの学歴や仕事などを聞き、最終的には「フーテンの寅かよ!」と言って縁談話はおじゃんになる。

まずこの時点で、「学歴がないと縁談は有利じゃない」ということを示唆しておく。

そして後半。

バリッバリ勉強のできる大学助教授がお千代を好きになるが、お千代はフーテン暮らしで学歴も良くない寅さんに恋をする。

お千代は、「寅ちゃんと話してると、生きている実感がするの」と言うのであった。

お千代にとって寅さんは、昔っからの友達であり、近い存在だからこそ良い面も悪い面も知っていた。

だからこそ、寅さんと話していると生きている実感がしていたのかもしれない。表面だけの付き合いではなく、心の奥底まで知ってくれているような寅さんに安心感を持っていたのかもしれない。

学歴だけで女心は掴めない。だが、学歴があるに越したことはない。

でも、最終的には学歴ではない…。

そんな、学歴へのアンチテーゼが盛り込まれていたのかな…なんて考えてしまった。

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』を総合評価するなら、星5中の星5評価である。

うーむ、傑作といえよう。

特に言うことなし。言うことなしと言っても悪い意味ではなく、もちろん良い意味で言うことがない。

全体としても長すぎず短すぎず。良い感じにまとまっているし、大学助教授と寅さんが相反する存在として出てくるところもまたストーリーに深みを出しているところである。

いつもとは毛色が違う一本だが、こういう路線も寅さんにはあるんだなぁ…と思うような作品だった。

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』は、いつもの男はつらいよシリーズにちょっと飽きてきている人にオススメしたい。

いつも寅さんが振られて終わる…という感じだが、今作は振られて終わらず、むしろ寅さんが振る側になっているのがまた面白い。

マンネリを感じているそこのあなた、ぜひ今作をみてはいかがだろうか。

終わりに

『男はつらいよ 寅次郎夢枕』についてレビューしてきた。

今作で10作目…。

あと38作+特別編があるのか…と思うと、まだまだ寅さんの旅は終わらなさそうだ。

今作のように、いつもよりも3度ぐらい胸が温まる作品が続いていけば良いなぁ…なんて思ってしまう今日この頃である。