【ネタバレ感想】『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(21作目)』は、雨と雷の演出が最高の作品だった

ふぉぐです。

ついさっき、『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』は、1978年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第21作目。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に木の実ナナ。若かりし頃の武田鉄矢も出演する。

あらすじとしては、「レビューのスターである奈々子に恋をするが、案の定振られてしまう寅次郎」という物語である。

寅次郎は夢を見ていた。

自分は、亡き寅次郎のクローンだという宇宙人。

柴又へとやってきたUFOに乗って、寅次郎だという宇宙人は宇宙の果てに消えていくのだった…。

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帝釈天では「大入り祈願」を行うために踊り子たちがたくさん集まっていた。

それに紛れて、寅次郎もとらやへと帰ってくるのだった。

とらやでは、おいちゃんが持病で発作を起こし、安静にしていた。

寅次郎は、帰ってくるなり備後屋とケンカを起こしてしまい、おいちゃんの病気が悪化してしまうのだった。

おいちゃんが病床に伏せていたことを知った寅次郎は、少ない金だがおいちゃんのためにと見舞金を渡す。

そして、もしおいちゃんに何かあった時のことは真剣に考えている…として、自分がとらやを継いだ後のことを語り出すが、それが原因でまたケンカになってしまい、プイッと出ていくのだった。

寅次郎は、熊本県にある田の原温泉にいた。そこで知り合った留吉という青年を弟子のように従えていたものの、宿代を払えずに速達でとらやへ手紙を出し、さくらを救援によこすのだった。

その一件で激怒したとらやの面々は、寅次郎にとらやへ帰ってくることを強制し、寅次郎はあえなくとらやへ帰還。

見違えるほどまじめに働く寅次郎だったが、レビューのスターである紅奈々子と知り合うことで、いつものように恋愛にうつつを抜かすようになるのだった。

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(21作目)』は、雨と雷の演出が最高の作品だった

というわけで『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』を見終わった。

まず最初の感想としては、今作は、

「雨と雷の演出が最高だなぁ」

に尽きる。

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』では、寅次郎がマドンナである奈々子の家にお呼ばれするシーンがある。

彼氏と結婚しようと思っていた奈々子だったが、踊りを諦めきれずに結婚を断る。

それが原因でメンタル的にやられていたので、とらやへとやってきた…という具合だ。

奈々子の家にいくと、外は雨。とんでもないぐらいにザーザー降りだったが、ふと奈々子が窓の外を見ると、結婚を断ったばかりの彼氏・隆がいるではないか。

奈々子は寅さんに断って、ザーザー降りで傘も持たずに立っている隆の元へ走っていく。

そして、隆と抱きついたところで、雨がザーザーと降りながら大きな雷までなる始末。

普通なら、これだけ幸せなシーンなのだから雨が止むぐらいがちょうどいい。

月夜の中、愛する2人が抱き合うシーンこそがこの風景にはふさわしいはずなのに、なぜかあのシーンでは土砂降り雷雨というシチュエーションとなっている。

これはまさに、寅さんの心境を表している比喩的表現なのではないだろうか。

愛する2人からすれば、抱き合っているあのシーンは最高である。

しかし、窓の外から抱き合う2人を見つめている寅さんからすれば、地獄以外の何物でもない。

よく、明るいシーンでは晴れていて、暗いシーンでは雨が降っている…というのが映画表現でのお決まりと言われているが、今作では見事にその常識を覆すが如く、寅さんの気持ちをわかりやすく表現してくれている。

寅さんにとっては雷雨のごとき出来事だった。

そして、寅さんがとらやに帰ってくる頃には雨が止む。

寅さんの中で、一つの決心がついた…ということなのだろう。

帰ってすぐ、寅さんはまた旅に出てしまう。いつものように。

現実と夢の狭間

今作では、「現実と夢」というわかりやすいテーマ設定がなされている。

奈々子がとらやへ遊びに来た時に、

「じゃあ、夢を叶えているのは私と寅さんだけね」

なんていうシーンがある。

中学の頃からテキ屋商売を考えていた寅さんと、学生の頃からダンサーになりたかった奈々子。

他のおいちゃんやおばちゃん、ひろしやタコ社長は、それぞれに夢はあったけれど、結局その夢を叶えることができなかった。

しかし、夢を叶えた2人が幸せなのか?というとそうではないことが今作では伺える。

夢を叶えた人だからこそ、そこに存在する悩みにいつも揺れ動かなければならない。

レビューでスターをしている奈々子からしてみれば、踊りと結婚を天秤にかけるぐらいに悩んでしまう。

寅さんはというと、テキ屋商売をやって幸せかと思いきや、

「いつも金借りてすまねえな」

なんて、さくらやひろしに謝っている。お金がないことで悩んでしまうわけだ。

その点、店を構えてどっしりと暮らしているとらや夫婦は安定した人生を歩んでいるし、中小企業の社長をしているタコ社長も、苦労はしているがそれなりに充実しているはずだ。その下で働くひろしも、恋い焦がれたさくらと一緒になれたのだから幸せではないはずがない。

現実的な暮らしをしているから不幸せで、夢を叶えたから幸せ…なんていう、安っぽい教訓として終わらないのが山田洋次監督の良いところである。

好きなことで生きていくためには、好きなことをとことんまで突き詰めなければいけない苦労がある。

奈々子だって、もちろんダンサーになりたかったから…といって、ずっとダンスが好きだったわけではないかもしれない。

ダンスの練習をしている最中、苦しいこともあったはずだ。

寅さんだって、テキ屋商売をやっていれば警察にどやされることもあるだろうし、中には全く売れずに落ち込むこともあるだろう。

好きなことだからと言って楽をするというわけではない。

好きなことだからこそ苦労がそこにはある…。

そんなことを暗に伝えてくれる作品だったように思う。

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

全体としては高評価にふさわしい出来である。

ストーリーは定番中の定番なのだけれど、いつも飽きさせない工夫がされているし、サクサクと観れてしまう良さがある。

また、武田鉄矢演ずる留吉が個人的にはツボだったのもポイント高しだ。

だが、個人的にはレビューのシーンがちょっとダレるかなぁ…という感じ。後半になるにつれてダレて来てしまうのでそこだけは減点である。

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』は、いつもの寅さん節が観たい人にはオススメである。

今作は、変化球的作品ではなく、どちらかというとスタンダード寄りの作品なので、定番らしい演出がなされているため観やすい。

また、結構わかりやすくテーマ設定がされている点もポイントだろう。

終わりに

『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』についてレビューしてきた。

余談だが、武田鉄矢演ずる留吉が女性に振られまくってしまうのは、あの髪型が問題だと思う。

サラサラヘアーというだけでもちょっと…うーんって感じだし、そもそも留吉にあの髪型は似合わない。

だが、そんな不憫な留吉が個人的には好きである。頑張れ留吉!負けるな留吉!