【ネタバレ感想】『男はつらいよ 寅次郎と殿様(第19作)』は、原点回帰的な作品だった

ふぉぐです。

ついさっき『男はつらいよ 寅次郎と殿様』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』は、1977年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第19作。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役として真野響子。

あらすじとしては、「愛媛の大洲にやってきた寅次郎は、そこで殿様と出会う。その殿様の頼みを叶えるために走り回る」という物語である。

寅次郎は夢を見ていた。

鞍馬天狗の寅次郎は、杉作という子を連れた若い女性と橋ですれ違う。

その女性は、さくらという名前だったが、橋の上では刀を持った侍たちが鞍馬天狗の寅次郎を襲う算段をしていたのだった。

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寅次郎は、端午の節句(いわゆるこどもの日)にふらりととらやへ現れた。

とらやでは、満男のために大きな鯉のぼりをあげているところだったが、寅次郎が満男のために小さな鯉のぼりを買ってきたことがきっかけで、またもや喧嘩になってしまう。

プイッと出て行った寅次郎だった。

伊予大洲(愛媛県)で商売をしていた寅次郎は、旅館に着くなり女将と仲良くなる。

すると、物憂げな顔をした若い女性が旅館にやってくる。

見かねた寅次郎は、その旅館で出している鮎を自腹でご馳走したり、土産物まで持たせてやったのだった。

次の日、財布のすっからかんぶりを見ていると、お金が風で飛んでしまう。

運よく寅次郎のお金を拾った人は、なんと伊予大洲を治めていた殿様の末裔(藤堂久宗)だった。

寅次郎はすっかりその家でご馳走になると、殿様は「お願いを聞いてくれないか」と話し出す。

聞くところによると、その殿様には息子がいて、次男が2年前に亡くなってしまったのだと言う。

次男とは結婚のことで揉めた挙句、勘当を言い渡しているぐらいの関係性だった。

そこで殿様は、次男が惚れたその女性(結婚相手)に一目会いたいと、東京出身の寅次郎にお願いをするのだった。

『男はつらいよ 寅次郎と殿様(第19作)』は、原点回帰的な作品だった

と言うわけで『男はつらいよ 寅次郎と殿様』を観終わった。

まず最初の感想としては、

「あ、なんか原点回帰っぽい作品だなぁ」

という印象だ。

前作(第18作)前前作(第17作)に比べると、だいぶスタンダードなストーリーだなぁ…という感じである。

変化球多めというよりは、全体的にストレート多め…というか。そんな印象である。

寅さんの考える、「粋」とは

今作では、いつもは間違ったことばかりを言いまくっている寅さんだが、なんとまぁ普通のことを言い出す。

どちらかというととらやの面々の方が悪いような。そんな気にさせる。

まず、鯉のぼりの件。あれはどう考えてもとらやの面々が悪い。

寅さんが怒るのも納得である。

「ごめんねお兄ちゃん、ついこの前鯉のぼり買っちゃったの!でもありがとう!その気持ちが嬉しいわ」

と寅さんが小さい鯉のぼりを出した時、さくらがスッと言えばあそこで終わったはずである。

そして寅さんは激怒し、とらやの面々の欺瞞的空間に嫌気を感じる。

寅さんは伊予大洲で鞠子(マドンナ)に鮎を食べさせ、そしてお土産まで持って行かせるが、これはまさに寅さんなりの粋な計らいである。

そう、寅さんとあの時点での鞠子は似ている。

鞠子についての情報はあの時点ではほぼなかったが、寅さんは「旅から帰ってきたら、誰しもが疲れている」というのを知っている。だから、いつぞやの「男はつらいよ」でも、

「旅から帰ってきたら、疲れてるだろうからシャケの切り身でも一つ用意しといてやるんだ」

とタコ社長や源ちゃんとともにご飯の用意をしているシーンがある。

寅さんなりの気遣い。そしてそれを実行に移す寅さん。

とらやの面々は、寅さんが帰ってきた時に「寅さんが怒らないようにする」ということをしてしまう。

それが寅さん的には納得がいかず、自分を厄介者として扱うその欺瞞さに呆れ果ててしまうというわけだ。

良い人のそぶりをした、嘘つきなのかもしれない…。

残酷なまでの、マドンナの無音攻撃

今作では、いつぞやの「男はつらいよ(確か吉永小百合さんがマドンナの回かな?)」のごとく、かなりマドンナの残酷さが露呈する。

そう、マドンナは、全く寅さんの好意に気が付いていない。

マドンナが住んでいる青戸の団地に寅さんが行った時、

「あら、偶然あったのにお土産を持ってるの?」

と笑いながら寅さんを自宅に招くぐらいの感じだったのだから、寅さんもその気になるのは当然といえよう。

しかし、マドンナは終盤で、寅さんに無音攻撃を繰り出す。

「あの旅館で寅さんとあって、人の愛情に触れた時、勤め先の男性と結婚する決意ができました」

なんてことを言ってしまう。

寅さんはそれを聞いて唖然。

その場は取り繕うも、すぐに旅へと出てしまう。

マドンナの無音攻撃がきつすぎて辛い。

そして、後家さんを嫁にもらう男の気持ちについても、寅さんなりの意見が飛び出す。

初めは、

「元夫が亡くなった日には、『そろそろ、前の夫の墓参りじゃないのかい?』なんて聞いてやるのよ」

と威勢良く発するも、最後にさくらが、

「でもお兄ちゃん、『それで本当に忘れられるのかなぁ』なんて言ってたわよ」

的なことを言う。

寅さんの気持ちの中にも、欺瞞が渦巻いていた。

男としては、それぐらいカッコつけて女性を嫁にもらいたい。

タコ社長のように、「俺はツレェなぁ」ということを本当は寅さんも思っていたはずだ。

しかし、寅さんは自分に嘘をつき、最後にそれがさくらへと漏れてしまう。

「男はつらいよ」は、そういう意味合いもあるのかもしれない。

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

全体として面白く、またスタンダードな寅さんなので鑑賞しやすい。

テンポよくストーリーが進んでいくので、最後まで面白おかしく鑑賞できた。

また、殿様のあの殿様っぷりも個人的には高評価。

あんなおじいちゃんが自分の祖父だったらなかなか大変だろうが、見るぶんにはとても癒されるので万事OKである。

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』は、スタンダードな寅さんを観たい方にオススメである。

寅さん節も今作では結構など正論をかましてくるので、寅さんのちょっと間違ってることが苦手な人でも鑑賞しやすいだろう。

終わりに

『男はつらいよ 寅次郎と殿様』についてレビューしてきた。

余談だが、寅さんの映画で良いポイントの一つとして、昔の日本の風景も堪能できるところにあると思っている。

昭和のあの風景にノスタルジーを感じる人も多いのではないだろうか。私もその1人である。

今作に登場する伊予大洲。個人的にはこれまで出てきた場所のなかで、なんだかとても行きたくなった場所の一つである。

今度、暇ができたときにでも電車を乗り継いで行ってみようか…そんなことを考えてしまうのだった。