ふぉぐです。
ついさっき『男はつらいよ 寅次郎の青春』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ 寅次郎の青春』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 寅次郎の青春』は、1992年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第45作。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に後藤久美子。
あらすじとしては、「友人の結婚式で宮崎に行くことになった泉。偶然宮崎にいた寅次郎と再開し、寅次郎が世話になっている床屋のおばさま宅へと行くことになるが、寅次郎が足をひねってしまい…」という物語である。
寅次郎は夢を見ていた。
シェイクスピア著の悲劇として有名なハムレットを翻訳していた翻訳家の「車寅」。
そこへ、甥の満男が泉とともにやってくるが、同時に追手がやってくる。
車寅は、追手を撃退するのだった。
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前作で就職口に困っていた泉だったが、なんとかCD店で働いていた。東京で無事に就職ができた泉に、家庭のような安らぎを与えたいと思っている満男は、仕事終わりの泉を自宅へ招いて楽しい夕食をとるのだった。
その頃、寅次郎は宮崎県は油津に滞在していた。
油津の喫茶店で偶然出会った床屋の女将さんと親しくなり、散髪をしてもらうことになる。
女将さんは、寅次郎が財布からお金を取り出すときに財布の中身をチラッと見て、お金がないことを知る。
急に土砂降りになったので、寅次郎は仕方なく床屋へ滞在。近くに旅館が無いか女将さんに尋ねると、「お金がないの、チラッと見えたんよ」と言われ、宿泊までさせてもらうことになる。
漁師をやっている女将さんの弟も帰ってきて、3人で楽しいひと時を過ごすのだった_。
次の日、地元の観光で飫肥城(おびじょう)へ女将さんと行く寅次郎。
そこで偶然、友人の結婚式に行っていた泉と遭遇。
泉とお茶でも…と思った寅次郎だったが、女将さんに「私、先に帰ってるけんね」と怒ったそぶりで言われ、また泉にも、「私のことは気にしないで…」と言われ、どっちを引き止めればいいかわからず、オロオロしていると階段で足をひねってしまう。
すぐに寅次郎は病院へ搬送され、泉は宮崎の病院からくるまやへと連絡。
満男は、「おじさんの見舞いに行く」という名目のもと、泉に会いに宮崎まで飛行機を乗り継いでいくのだった。
『男はつらいよ 寅次郎の青春(第45作)』は、満男の言葉が深く刺さる作品だった
というわけで『男はつらいよ 寅次郎の青春』を観終わった。
まず最初の感想としては、
「今作は満男の言葉が深く刺さるなあ…」
という印象である。
今作『男はつらいよ 寅次郎の青春』での満男のセリフには、次のようなものがある。
「今はおじさんと一緒にいて楽しいかもしれないけど、おじさんと長く暮らせば嫌になって、悲劇が待ってるんだ」
このセリフは、床屋の女将さんが、寅さんが今日帰ってしまうことを知ったときに、
「なんで朝にでも言ってくれんかったとね!」
と怒ってしまい、車ですぐに立ち去ってしまってからのセリフである。
泉が、
「なんでわからないの?あのおばさまはおじちゃまが好きなのよ。おじちゃまは残るべきよ」
と言ったのに対し、満男は反対意見を言う。その反対意見というのが、上記のセリフである。
満男は、寅さんの心がだいぶわかってきたのだ。
寅さんは自分という存在がどういうものかを、実に客観的にわかっている。
「ヤクザな男」なんて自分で言うぐらい、自分が置かれている境遇、そして自分の内面のことを洞察しているのだ。
そこで良いスパイスとして降りかかるのが、今作の副題である「青春」という言葉である。
青春は、何も若い人たちだけのものではない。寅さんのような壮年を過ぎた男にだって、いつでも青春はできるのである。
青春には、悩みがつきものである。
「自分はあの子を愛しているけれど、自分なんかと付き合ってあの子は幸せになれるのだろうか…」
男はつらいよの賢明なファンならこの気持ちは想像に容易いことだろう。
そう、これはまさに、寅さんの気持ちである。
さらに言えば、今作は寅さんがマドンナ(女将さん)に惚れられる。そういえば前作でも寅さんは惚れられていた。
惚れられた寅さんは、自問自答をする。
「俺なんかと一緒になっちゃぁいけねえ」
寅さんはいつでも青春かのような恋愛をしているが、今作の寅さんはまさに女心がわからない一学生のようなそぶりをしてしまう。
そんな寅さんに心底腹を立てた女将さん。
まさに、「寅次郎の青春」という題がふさわしい作品だったのかもしれない。
おじさんの影響から脱却しようとする、満男
今作の最終盤で、満男はおじさんである寅さんの影響から脱却しようと試みる。
それまで、寅さんのことを慕い、
「大学に落ちたらおじさんの弟子にでもなろうかな」
なんて言っていた満男。
しかし、今回、彼なりに思うところがあったのか、最終盤でひろしに「おい、もう少しスピードを落としてくれ」と言わせるぐらいにランニングが早くなる。
それはおそらく、山田洋次監督なりの表現なのだ。
ランニングは、そのままランニングと捉えるのではない。
今作の序盤。ひろしに全く追いつけなかった満男。すぐにバテて、「基礎体力がないんじゃないか?」なんて嫌味を言われる始末だった。
それはおそらく、人生に本気じゃなかった…ということの表れなのである。
それが、最後のシーンではひろしを抜き、どんどん一人で突き進んでいく。
ひろしは満男のスピードに追いつけない。「年の差を考えてくれ!!」なんて言ってしまう。
第1作では若かったひろしも、おそらく今作では40代中盤ぐらいにはなっているのだろう。
もう、昔のように人生を突き進むスピードはない。次世代の満男に託すしかない。
満男は、自分の人生を、助けを借りながら進むことを覚えるのである。
それまで、「朝起きて、コーヒーの匂いがぷんとしてるのが嫌なんだよ!」と生意気な口ぶりだったのも、「一人で生きていく」という意味を履き違えてのことだったのだ。
人間は、一人では生きられない。それは寅さんを見ればわかる。
寅さんは、一人で生きているように見えるが、いろんな人の助けと優しさを受けながら生きている。
しかし、おじさんのような暮らしは、自分にはできない。それは幸せなのだろうか。自分の幸せは他にあるんじゃないだろうか。
そう考えた満男は、自分の人生を見つけるために、若さを武器に猛烈な勢いで生きていくことを知る。
そんな、最終盤シーンだったのだ。
『男はつらいよ 寅次郎の青春』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 寅次郎の青春』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。
泉との仲が個人的にはちょっと中途半端っぽく終わってしまったなぁ…と思ったが、寅さんシリーズではかなり珍しいキスシーンがあったのは感慨深い。
寅さんでは絶対にできない…そんなシーンだ。
全体的にサクサクと進んでいくので間延びはしない。最終章にふさわしい、若干哲学ちっくな終わり方だったのも高評価。
星4評価に値する作品だろう。
『男はつらいよ 寅次郎の青春』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 寅次郎の青春』は、とりあえず満男シリーズの最終章なので、これまでの満男シリーズを全て見てきた人にオススメしておきたい。そうじゃないとちんぷんかんぷんである。
終わりに
『男はつらいよ 寅次郎の青春』についてレビューしてきた。
ついに45作まで見てしまった男はつらいよシリーズ。
残るはあと3作。
登場するマドンナは、
- 松坂慶子
- かたせ梨乃
- 浅丘ルリ子
となっている。
寅さんとの旅も、そろそろ終わりを告げようとしているなぁ…。
寂しいもんである。