【ネタバレ感想】『男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)』は、バカ親ぶりと現実が見事に交わった作品だった

ふぉぐです。

ついさっき、『男はつらいよ 寅次郎の縁談』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。




『男はつらいよ 寅次郎の縁談』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』は、1993年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第46作。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に松坂慶子。

あらすじとしては、「就職活動が上手くいかない満男が、30数社受けてもまだ内定をもらえず自暴自棄に。満男はさくらの制止を振り切って、旅路へと出てしまうのだった」という物語である。

寅次郎は旅先で、嫁入りで婿の元へ向かう儀式を行なっている一向と出会い、祝福の言葉をかけるのだった。

満男は就職活動をしていた。今回の会社は、ひろしの兄の紹介で面接に来た広告代理店会社。ついに最終面接までこぎつけるも、結果は不採用。

周りの友達は内定をもらっている最中、自分は30数社も受けてるのに内定をもらえない。

さらに、なんどもなんども綺麗な字で履歴書や葉書などをおくること、そして毎度毎度面接で同じことを聞いてくる面接官に嫌気がさし、ついには自暴自棄になる。

満男は荷物をまとめ、さくらの制止を振り切って、寝台車に乗って旅へと出てしまうのだった。

満男が旅に出て四日がたったころ、ふらっと寅次郎が帰ってくる。

さくらは、寅次郎の顔を見るなり涙を流す。

突然のことにびっくりした寅次郎。さくらからわけを聞くと、次の日すぐに満男がいると思われる香川県の志々島へと向かうのだった。

満男は、志々島の診療所で看護婦をやっている亜矢と仲良くなる。

そして、島の人から慕われ、「生きている実感」を感じるようになる。

亜矢と二人で海岸沿いを歩いているところに、何と寅次郎が向こうからやってくる。

ギョッとした満男。亜矢はその場を察して帰る。

寅次郎は、さくら達から頼まれて満男を説得しに来たが、満男には帰りたくない訳があった。

『男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)』は、バカ親ぶりと現実が見事に交わった作品だった

というわけで『男はつらいよ 寅次郎の縁談』を観終わった。

まず最初の感想としては、

「今作はバカ親ぶりと現実が見事に交わっているなぁ…」

という印象である。

まず、今作でどうにも「うわ…」と引いてしまったのが、さくらとひろしの満男に対する態度である。

就職活動は、それでなくともストレスが溜まるものである。

さらに、30数社も受けて全滅ということ、そして1993年ということで、バブルがハジけたことによる就職難。

どれを取っても満男にとってはストレスでしかない。

そこに、あんなに親が過干渉してきたらそりゃ満男だってキレるよ…と思ってしまった。

さらに言えば、確かにさくらやひろしからすれば満男は子どもである。

だが、子どもとはいえ就職活動をしているんだから(あと浪人もしてたし)、今作の年齢はおそらく23〜24ぐらいだろう。

もう立派な大人である。なのに、さくらたちはまだ満男を子どもだと思っているのだ。

だから満男はキレる。

「俺は大学なんて生きたくなかったんだ!父さん達が押し付けてきたんじゃないか!」

まさに、言い得て妙である。

ひろしは、自分が大学に行かなかったから…という理由で、満男に大学進学を押し付ける。満男のためを思ってではない。自分の欲望を満足させるために満男を大学に入れたのだ。

だから、ひろしは図星を突かれ、満男を殴る。最低な父親だ。

さくらとひろしの、満男に対する言動には35作ぐらいから「なんか嫌だなぁ」と思っていたのだが、ここにきて本当にバカな親だったのだなぁと痛感した。

それに対し、満男のことを「あいつももう大人なんだ」とさくらに告げる寅さんは、さくらたちよりも満男のことを客観的に見れているなぁと思うのだ。

決めつけと、実際は違うのである

今作『男はつらいよ 寅次郎の縁談』で、満男が旅に出て行こうとするシーンで、さくらがこんなことを言う。

「旅に出てどうなるの?今の状況が変わるわけでもないじゃない!!」

しかし、満男はその言葉を振り切って旅へ出る。

寝台車に乗ると、変なオヤジから、

「お前、学生か?いいねえ気楽で…。旅先も決めずに旅をするなんて、ろくなもんじゃねーな…」

なんて言われる始末。見ず知らずの人間にそんなこと言うお前さんの方がロクでもねーわと思うのだけれど、そんなことは置いといて…。

結論的には、満男は旅に出て正解だったわけだ。

旅に出ることで、「生きている」ことの実感を得る。

汗をかいて働いて、朝は早起きして海へ出て。新鮮な空気を毎日吸って陽の光を浴びながら働くことに、満男は意義を見出した。

さくらは、旅へ出たことがないのだ。

だから、ただの思い込みで、

「今の状況が変わるわけでもない」

と決めつけてしまう。

しかし、実際に行動に移した満男からすれば、旅をすることでかなりの収穫があったわけだ。

人の温かさ、働くことの実感。

サラリーマンになることだけが生きる道ではない。都会だけが人間の生活する場所なわけでもない。

「就職活動」という、凝り固まった概念にだけ向き合っていたのでは、突破口はひらけない。

最終的には、満男は就職活動に合格したらしい。タコ社長が「来年から社会人だねえ」なんて言っているのからも容易に想像ができる。

旅は満男を成長させたのだった。

寅さんの縁談のゆくえ

今作『男はつらいよ 寅次郎の縁談』の副題にもある通り、

「縁談」

というワードが深い意味をなしているように思う。

42〜45作までの4作品では満男主体のラブストーリーが展開されていたが、今作では久しぶりに寅さんが愛の中心にいる。

お相手は、愛人にたくさん子どもを産ませたある老人の…その子ども。

名前を葉子。

葉子は、寅さんに惚れる。満男からすれば「またおじさんは失恋をした」と言っていたが、まだまだ満男は甘い。

寅さんは、今作では失恋をしていないのだ。

そう、いつものように、女性からの好意を感じた瞬間に弱腰になるアレで逃げるのだった。

その証拠に、葉子が満男に「あんたみたいな青二才に、寅さんの魅力がわかってたまるか!」と怒るシーンがある。

その直後、葉子は寅さんにこう言う。

「寅さん、今日は月が綺麗やねえ」

なんと美しい愛の言葉だろう。

文学青年・文学婦人ならすぐにこの言葉の意味がわかったのではないだろうか。

そう、有名な夏目漱石の言葉である。

(I love youを「我君を愛す」と訳した生徒への夏目漱石の言葉)

「日本人はそんなことは言わない。月が綺麗ですねとでもしておきなさい」

お分りいただけただろうか。

そう、葉子は寅さんに「好きです」と遠回しに言っていたのである。

しかし、寅さんはその言葉を「本当に月が綺麗だと思ったんだろう」と察し、「あ、そうですねえ!」なんて慌てる。その様子を見た葉子は、ささっと家へと戻ってしまう。

寅さんの縁談はうまくいかなかった。

寅さんはまた、逃げたのである。

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

うん、いつもの寅さんクオリティ。

前作でも、徳永英明の「最後の言い訳」という歌が挿入歌として流れていたが、今作でも流れていたのには少し笑ってしまった。確かに良い曲だけど…笑。

全体としてサクサク進んでいくので見やすい点もグッド。星4評価に値するだろう。

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』は、38作目ぐらいからの男はつらいよを見ている人にオススメしたい。

今作は基本的に寅さんのラブストーリーが軸になっているので、男はつらいよシリーズを見ている人ならすっと入っていける内容になっている。

終わりに

『男はつらいよ 寅次郎の縁談』についてレビューしてきた。

ついに46作。残りは47作と48作。そして渥美清さん没後に作られた特別編…の3作である。

30作目前後から、満男が存在感を出し始め、くるまやの面々は徐々に老化が進んでいくのを感じていた。

今作も、おいちゃんおばちゃん、そしてタコ社長の出番は多くなく、ほとんどが満男だった気がする。

男はつらいよが終焉に近づいている感がひしひしと伝わってくる。




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