【ネタバレ感想】『男はつらいよ 寅次郎春の夢(第24作)』は、異文化が織りなす「愛」についての作品だった

ふぉぐです。

ついさっき、『男はつらいよ 寅次郎春の夢』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。




『男はつらいよ 寅次郎春の夢』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』は、1979年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第24作目。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に香川京子。マイケル役にハーブ・エデルマン。

あらすじとしては、「日本へ行商にやってきた外国人のマイケルが、とらやへ下宿することになる。そこへ、寅次郎が帰ってくる」という物語になっている。

寅次郎は夢を見ていた。

1930年代の世界恐慌。サンフランシスコのチャイナタウンにて、とある男性が拳銃で撃たれて血を流しながら店に入ってくる。

その男性は、生き別れた妹を探しているようだったが、なんと水を持ってきてくれた女性がその探していた妹、「さくら」だった。そしてその男性は寅次郎だった。

するとそこへ、FBIが入ってくる。しかし、思わぬアクシデントでFBIは気絶。船の船長をしているひろしがやってきて、寅次郎はさくらとともに自由を手にするのだった…。

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とらやでは、貰い物のぶどうが大量にあったので、寅次郎の部屋で干していた。

するとそこへ、寅次郎が土産のぶどうを持って帰ってくる。

慌てたとらやの面々。だが時すでに遅く、寅次郎は部屋に干してある大量のぶどうを見て1階へ降りてくるのだった。

そこへ、社長の貰い物で大量のぶどうを持ったひろしが帰ってくる。

そしてひろしは、「誰だい、こんな安っぽいぶどうを買ってきたのは」と、寅次郎が買ってきたぶどうにいちゃもんをつけ、寅次郎は不機嫌になる。

夜、英語塾に習い始めた満男に、「おじさんのことはなんて言うんだい?」と寅次郎が聞くと、満男は「タイガー」と言う。そこへ、千葉県の方でペットとして飼っていた虎が逃げ出したニュースを話しに、タコ社長がやってくる。

「俺はね、射殺すべきだと思うよ」という虎への持論を展開するタコ社長に怒る寅次郎。ぶどうをタコ社長の顔に擦り付け、またプイッと出て行ってしまうのだった。

数日後、帝釈天に身長の高い外国人がやってくる。

日本語ではなく英語を話すので、何を言っているかわからない御前様は、とらやへ外国人を連れてくる。

すると、ちょうど客として居合わせた高井圭子(マドンナ)が、外国人の通訳をしてくれた。

聞くところによると、日本のホテルはどこも高いので、安いホテルを探しているのだという。

不憫に思ったとらやの面々は、外国人を下宿させることに決める。

名前を聞くと、彼はマイケルという名前だった。

『男はつらいよ 寅次郎春の夢(第24作)』は、異文化が織りなす「愛」についての作品だった

というわけで、『男はつらいよ 寅次郎春の夢』を見終わった。

今作の印象をまず最初にあげるとするならば、

「異文化によって愛を示す方法が違うんだなぁ」

ということである。

今作『男はつらいよ 寅次郎春の夢』の印象的なシーンとして、マドンナである高井圭子とその娘である高井めぐみがとらやへとお邪魔した時に、異文化の違いを話すシーンがある。

「マイケルが言ってたの。ひろしさんは本当にさくらさんのことを愛しているのかって」

確かに、普通に暮らしているそぶりだけを見ると、外国人には確かにわかりにくいのは事実である。

今でこそ、そこまで昔気質な男性はいないかもしれない。しかし、面と向かって「ありがとう」というのは気恥ずかしい…。それが日本の文化であり、美しきも儚い人情である。

もちろん、

「ありがとうと言わないこと」

を賞賛しているわけではない。そりゃありがとうという感謝の言葉は言わないより言ったほうがいい。

だから、マイケルが何かにつけて、「Thank You」ということに対し、おばちゃんやさくらは、

「やっぱり外国人ってのはいいねえ。下手な日本人より全然マシだよ」

と賞賛する。

しかし、最終的にさくらは、「I love you」と告白するマイケルに「impossible」と言って拒否する。

さくらにはすでにひろしが居たから拒否したのか…というと、おそらくそういうわけではない。いや、もちろんそういうわけもあるんだろうけど、それだけではないのだ。

やはり日本の「話さない愛情」で育っているから、なんとなく直接的な表現で好意を表現する異文化が合わなかったのだろう。

だからさくらは、ギョッとしたような表情で、マイケルの元を離れる。

それと対照的に、寅さんは「好きです」なんていう言葉を使わずに、まさに日本のごとくサッと去りゆく。

愛する人をギョッとさせるようなことは言わない。相手の気持ちがわかったら、多くは語らずに身を引くのである。

どちらが良い悪いではない。

アメリカの文化にだって良いところもあるし悪いところもある。それは日本も同じだ。

しかし、日本で育っている以上、「あえて言わない愛情」の良さを知っている…なんだかそんな異文化の違いを表現しているような作品だったように思う。

最後のテキ屋仲間の心と行動

今作の最後のシーンで、寅さんがテキ屋仲間と出くわすシーンがある。

今作の中盤でも出てきたテキ屋仲間だったが、なんと最後のシーンでは嫁さんをもらっているのである。

テキ屋仲間は、寅さんに挨拶する嫁を見て恥ずかしそうに、

「もう良いからお前は行け!」

と背中を押す。

しかし、嫁を行かせた後のテキ屋仲間の表情は、とても嬉しそうなのである。

言葉では「早く行け!」と無愛想なことを言うけれど、心の中では嬉しい。

これもまた、日本文化と異文化の違いをテーマにした今作だからこそ映えるシーンのように感じる。

これがもし、いつものように寅さんが失恋するだけの作品だったとするならば、このシーンは完全なる嫌味であり蛇足である。

寅さんは失恋したけどテキ屋仲間は恋を実らせた…なんて、そんな残酷な終わり方になってしまうだろう。

今作も、もちろん寅さんは暗に失恋した。

しかし、今作のテーマは「恋愛」と言うよりも、「異文化」が根底にある。

だからこそ、最後に惚気るように去っていくテキ屋仲間を見て、寅さんも、

「新年からやってらんないねえ!!」

なんて言いながらいつものように威勢良くテキ屋を始めるのである。

今作だからこそのシーンだなぁと感じた。

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

全体としてはいつものように滑らかに物語が進んでいく。とても面白くて途中はハラハラドキドキするようなシーンもある。

しかし、なぜかマイケルが関西の方へ行ってしまったり、話が飛ぶような箇所があるので、そこだけ個人的にはマイナス評価かなと。

それ以外は全体としていつもの寅さんクオリティなので、楽しめないわけがないのだ。

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』は、哲学的・倫理的なテーマで考えたい人にオススメである。

男はつらいよシリーズの中には、いくつか哲学的な要素が入っている話があるのだけれど、今作も今作でかなり哲学的である。

Wikipediaにも、

マイケルのさくらへの愛情の告白という倫理的課題を寅次郎は、欧米人には日本人のように許されぬ恋心を心に仕舞いこむ「粋」は持ち得ないとする日本人の文化的優位性でもって解している。もっともこれとは逆にマイケルに母親が米国文化の優越感から日本人に対し、「カミカゼとハラキリの怖い国」という偏見に満ちた手紙を出しており、監督は両国の文化的齟齬を両国民の無知と誤解という次元でユーモラスに相殺している。

(Wikipediaより引用:男はつらいよ 寅次郎春の夢

と、今作が異文化を主体にした倫理テーマであることが示唆されている。

終わりに

『男はつらいよ 寅次郎春の夢』についてレビューしてきた。

余談だが、今作のマイケル役の「ハーブ・エデルマン」は、どうやらジャッキーチェン主演の「スパルタンX」にも登場しているらしい。

1996年に亡くなったようである。

今作のマイケルは、エデルマン氏以外には考えられないぐらいの好演だったなぁと個人的には思っている。

背が高く、日本人が考えうるいかにもな外国人。

エデルマン氏のご冥福を祈って。