ふぉぐです。
ついさっき、『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』は、1985年公開のコメディ映画。男はつらいよの第36作。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に栗原小巻。
あらすじとしては、「家出をしてしまったタコ社長の娘のあけみを連れ戻すために伊豆へと向かう寅次郎。あけみとともにある島へ行くことになるが、そこで出会った美人な先生が気になり…」という物語である。
寅次郎は夢を見ていた。
「日本人らしい日本人」として、宇宙飛行士へ抜擢された寅次郎。
NASAのロケットが飛び立とうとしている間際に、宇宙へ行くことに躊躇してしまう。
無理やりロケットに押し込まれた寅次郎は、おしっこをちょびっと漏らしてしまうのだった…。
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柴又では、タコ社長が朝のニュース番組の「お尋ね人探しコーナー」に出演するということで、みんながテレビに見入っていた。
というのも、タコ社長の娘であるあけみが、結婚生活に嫌気がさして1人でどこかへ行ってしまったのである。
テレビの放映が終わって一息ついているところに、あけみからとらやへ連絡が入る。
「寅さんに会いたい」
というあけみの願いを聞いたさくら。だが、肝心の寅次郎がいないのでどうしようか…と思っているところに、寅次郎が旅から帰ってくる。
ちょうどいいところに帰ってきた寅次郎に事情を説明すると、寅次郎はすぐにあけみがいる伊豆の下田に向かうのだった。
下田であけみと遭遇した寅次郎。旅館で酒を飲んでいると、あけみは疲れからかすぐに寝てしまう。
次の日、あけみが「行ってみたい」と言った向こうの方に見える大きな島へ船で渡る。
船では、島の小学校の同窓生が11人いて、寅次郎は同窓生と仲良くなるのだった。
島へ着くと、同窓生を昔教えていた真知子先生がみんなを出迎える。
真知子先生の美貌に驚愕した寅次郎は、そのまま同窓生とともに同窓会へとついて行ってしまうのだった。
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて(第36作)』は、成熟してしまった寅次郎を感じる作品だった
というわけで『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』を観終わったわけだが…。
まず最初の感想としては、
「今作の寅さんはえらく成熟してしまったなぁ…」
ということである。
そう、今作の寅さん…もとい、前作のレビューでも話したが、30作目以降の寅さんはどこか大人びた印象を受ける。
第1作〜第20作あたりまでの、イキイキと恋をし、そして絶望に打ちひしがれている寅さんを見ると胸が痛くなっていたものだが、30作目ぐらいになってくると徐々に恋愛指南をする寅さんが現れてくる。
今作ではまさにその様相がはっきりとしていて、寅さんがどこか成熟して遠いところへ行って帰ってこないような…そんな錯覚に襲われる。
恐らくそれは、寅さんを取り囲む周りの影響も大きいのだと思う。
さくらとひろしが結婚して、今作でそろそろ約15年目ぐらいになる。
満男も中学生。タコ社長の娘・あけみは結婚。
おいちゃんおばちゃんも歳をとる。
そんな時代の流れ、生活の流れで、寅さんもまさかそのままでいるわけにはいかない。
だから、「恋愛」というものに対して、…もとい、あけみから聞かれた「愛ってなに?」という答えに対して、成熟してしまった答えを出すのだ。
それが良いか悪いかという問題ではなく、これもまた、寅さんによる寅さんなりの変化なのかもしれない。
寅さんのマドンナに対する反応は、普通のことなのかもしれない
今作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』で、寅さんが式根島から帰ってこない!と言った時に、満男の一言が深い。
「常識的に考えれば、美人な女の人がいたんだよきっと」
満男は、寅さんの気持ちをなんとなくわかっている。また、恐らく「思春期」ということで、そういうこと(いわゆる性的なこと)には目がないのだ。
だから、満男は寅さんに気持ちがわかる。美人な女性を前にすれば、誰だって帰りたくないものだ。
恐らく、これまでの寅さんだったら、あけみがなんと言おうとも式根島に残っていたはずだ。
しかし、今作の寅さんはあけみの情にやられて、しぶしぶと東京へ帰ってきて、寝込む。
もし、あと2〜3日式根島にいれば…と考えてしまう寅さん。
ひろしもタコ社長もおいちゃんも、寅さんのことを少し小馬鹿にしてしまうのだが、寅さんのマドンナに対する反応は、男であれば普通のことなんだと思う。
美人さんを見れば、男なら(全ての人とは言わないけれど)惚れてしまう。現に柴又駅で真知子先生とすれ違った備後屋たちは、真知子先生の美貌に思わず振り返ってしまうのだから。
何も寅さんだけがマドンナにメロメロとなるわけではない。
もし、ひろしが、タコ社長が、おいちゃんが…寅さんの立場だったなら、寅さんのように振る舞ってしまうだろう。
寅さんのマドンナに対する振る舞いは、普通のことなのだ。
自分から、結婚の話を切り出す寅さん
今作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』の感慨深いシーンに、調布の飛行場で真知子先生が寅さんに結婚を申し込まれたことを話すシーンがある。
これまでの寅さん…特に、第1作〜第20作ぐらいまでの寅さんだったら、
「な…何かあったんですかい…?」
なんてドギマギした感じでマドンナと接するはずだ。
しかし、今作の寅さんは違う。
マドンナが口重たくしているところを自分から、
「その子の母親になってくれって言われたんでしょ?」
と、マドンナが結婚を申し込まれたことを切り出す。
そして、マドンナとその男性が結婚することを後押しするように、寅さんはマドンナを励ますのだ。
その寅さんが、実に哀しい。「悲しい」ではなく「哀しい」のだ。哀愁を感じるその背中を思うと、胸を裂かれるような思いである。
終盤、寅さんのために上野まで荷物を持って行ってあげたさくらが帰ってくるシーンが絶品である。
寅さんはその場にはいない。なのに、寅さんがいる情景が浮かんでくる。
自分が一番哀しいはずなのに、タコ社長のことまで気遣う寅さん。
一つ大人になってしまった寅さんは、徐々に本当の意味で「大人」へと変わっていくのである。
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。
いつものことながら寅さんクオリティ。サクサクと進んでコメディ要素抜群。ちょっとダレるところもあるけれど、今作はまぁ普通に面白い作品である。
だが、やはり大人になっていく寅さんにはまだ違和感が残る。これは私の感じ方の問題なので作品に罪はないのだが、なんとなく…もう少し寅さんには子どもでいてもらいたいものだ。
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』は、大人に移り変わっていく寅さんを見たい人におすすめである。
特にこれまでの作品と変わりがある訳ではないのだけれど、少しずつ大人になっていく寅さんは必見である…。
終わりに
『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』についてレビューしてきた。
余談だが、今作では男はつらいよには珍しく、女性の後ろ裸が映るシーンがある。
若かりし美保純のヌードシーンな訳だが、なんとなくこれもまた感慨深い。
そりゃ、大自然のあの温泉に入れれば天国だよねえ…なんて思ってしまった。
式根島、いつかは行ってみたいものだ。