【ネタバレ感想】『男はつらいよ 柴又慕情(第9作)』は、寅次郎の恋物語が切ない映画だった

ふぉぐです。

ついさっき『男はつらいよ 柴又慕情』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。

ちなみにネタバレ全開でレビューしていくのでまだ観ていない方はご注意を。

では、さっそくレビューに移ろう。




『男はつらいよ 柴又慕情』ってどんな映画?あらすじは?

『男はつらいよ 柴又慕情』は、1972年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第9作目にあたる。

監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に吉永小百合。

また、前作までのおいちゃん役である森川信が他界したため、今作のおいちゃん役は松村達雄に変わっている。

あらすじとしては、「石川県は金沢を旅行していた女性3人組と寅さんが出会い、そのうちの一人が寅さんと親しくなる」という物語である。

とらやでは、2階の寅次郎の部屋を貸し部屋として賃料を取るようにしていた。

それはさくら夫婦が、今住んでいるアパートの値上げ、そして満男が大きくなってきた事による部屋の圧迫を理由に、一軒家を購入しようと考えていることにあった。

せめて少しでもさくらたちのためになるようにと、とらや夫婦が思ってのことだった。

そこに、寅次郎が現れる。

寅次郎は、自分の部屋が貸し部屋として扱われていることに不満を募らせ、プイッとすぐに出て行ってしまうのだった。

数日後、石川県は金沢を旅行している3人組の女性がいた。

金沢でノボルと偶然出会った寅次郎は、ある宿屋で宴会さながらの賑わいっぷりを見せていた。

次の日、朝早く宿屋を出発したノボルとは別に、金沢でゆっくりしていた寅次郎。

そこに、金沢を旅行していた3人組と出会い、その中の一人である歌子に想いを寄せるようになるのだった。

『男はつらいよ 柴又慕情』は、寅次郎の恋物語が切ない映画だった

というわけで『男はつらいよ 柴又慕情』を観終わった。

まず最初の感想としては、今作『男はつらいよ 柴又慕情』は寅さんの恋物語としてはかなり切ない部類に入る映画だと感じた。

歌子は、寅さんと出会ってから「寅さんに会いたい」と他の二人にこぼすようになる。

その言葉を真に受けた寅さん。

もちろん、「男はつらいよシリーズ」ではどの作品も寅さんは恋物語に打ちひしがれてしまうのだけれど、今作は明らかに寅さんに分があるよう見えるから切なさを存分に感じる。

歌子が寅さんに会いたがっていたのは、結婚相手との縁談を許してくれない父への反抗…的な側面が大きかったわけだ。

だから、歌子は寅さんの自由奔放なその生き方に想いを馳せ、寅さんに親しみを覚えたのかもしれない。

そんなことはつゆ知らず。寅さん本人は歌子からの好意を本物の行為として真に受けてしまう。

この切なさ。

寅さんに思わず同情をしてしまうのである。

夜空を見つめる寅さんと歌子、そしてさくらと雲

映画最終盤シーンで、寅さんと歌子が別の方向を見ながら夜空を見上げるシーンがある。

寅さんは、おそらく涙で星なんて見えていないのだ。だが、なんとなく上を向く。

まさに、坂本九の名曲「上を向いて歩こう」のように、涙がこぼれないことを祈りながら。

その反対として、歌子は彼との輝かしい将来を見つめる。

星に願いを込めながら…なんてロマンチックすぎると逆にクサイかもしれないが、まさにそんな様相をしているのである。

直接振られたわけではないが、暗に振られてしまった寅さんが切ない。

しかし、そのあと、寅さんが河原でさくらと一緒にいるシーンの言葉に私はやられてしまった。

「あんな雲みてえになりてえんだよ」

星になってしまうと、そこに定住することを意味してしまう。同じ場所でずっと輝き続ける星。夜だけ輝きを放つ星である。

これはまさに、前作「男はつらいよ 寅次郎恋歌」と同じメッセージ性を秘めている。

寅次郎恋歌では、ひろしの父親が「普通の生活(定住すること)」を寅さんに諭すようなシーンがある。

旅ばかりしている寅さんに、「本当の幸せ、人間の運命は家族でテーブルを囲んでご飯を食べること」ということを教える…といった具合だ。

しかし、寅次郎は最終的に旅に出てしまう。マドンナの貴子が「旅に行きたいわ」と言いながら、家賃を払うことを電話で言っていたから。

今作の寅さんにも、フーテンとしての生き方を暗に示すような細工がしてある。

中でも、

「あんな雲みてえになりてえんだよ」

と言った寅さんは、歌子と星を眺めていた時とは面持ちがだいぶ違うのだ。

寅さんの心理面をうまく表した、良いシーンだったと思う。

2代目おいちゃん

『男はつらいよ 柴又慕情』から、おいちゃん役が森川信から松村達雄に変わった。

2代目おいちゃんの雰囲気を個人的に表現するなら、どこか江戸っ子気質の強いおいちゃんだなぁという感じである。

森川信が演じるおいちゃんは、どちらかというとコメディ要素が強かった。

寅さんと面白い掛け合いをして、親しみやすい表現力を持っていたように思う。

その点2代目おいちゃんは、江戸っ子気質が強く、コメディ要素というよりはまさに演技派な感じがした。

もちろん森川信の演技がヘタというわけではないし、森川信もお上手である。

だが、松村達雄はコメディよりも演技に重点を置いてる感じがしていて、見ているこちらも物語に入り行きやすかったかな…と思った。

まだ松村達雄にとっては1作目なので、ちょっとぎこちない感は出てしまっていたんだけれど(勝手に私がそう感じているだけかもしれないけど)、普通に面白い作品だったように思う。

『男はつらいよ 柴又慕情』を総合評価するなら?

『男はつらいよ 柴又慕情』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。

うん、良き。9作目まで来るとストーリーに安定性が出てきているように思う。

全体として若干間延びする感じがしたので、そこを加味して星4評価。

ただ、やっぱり吉永小百合さんがお綺麗だったので…星5をつけたい…。

しかし、ここで私は心を鬼にして星4評価とさせていただくことにしよう。

『男はつらいよ 柴又慕情』はどんな人にオススメ?

『男はつらいよ 柴又慕情』は、いわゆるサユリスト(吉永小百合さんのファン)にオススメしたい1本である。

今でもお綺麗な吉永さんだが、今作(当時27歳ぐらい)の吉永さんは…そりゃサユリストなんて言葉が生まれてもおかしくないぐらいお綺麗である。

吉永さんファン、そして今の吉永さんを見て、

「吉永小百合って今でも綺麗だけど、昔はどれぐらい綺麗だったんだろ」

と興味を持ったあなたにオススメしたい作品だ。

終わりに

『男はつらいよ 柴又慕情』についてレビューしてきた。

余談だが、9作目まで来ると、

「これで何回振られたかな」

なんて言葉が寅さんから出てくるぐらいになっている。

また、私が一番驚いたのは、「男はつらいよシリーズ」は、いわゆるちゃんとあの世界観が動いていることである。

例えば「サザエさん」みたいに、あの世界観が固定していて「過去にあった出来事」などを振り返ることのない作品なのかな…と思っていたら、

「2年前にあんなことがあってねぇ」

と、過去の作品での出来事を振り返っているのだ。

この、ちゃんと「男はつらいよ」という世界が一つの時間軸の中で動き続けているのが面白い。

2019年の年末に最新作が上映されることになっているが、今もどこかで寅さんは歩き回っているのかもしれない。

そう考えると、なんだか寅さんに無性に会いたくなる自分がいた。