ふぉぐです。
ついさっき、『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』ってどんな映画?あらすじは?
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』は、1994年公開のコメディ映画。男はつらいよシリーズの第47作。
監督は山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役にかたせ梨乃。
あらすじとしては、「社会人になった満男の元に、大学の頃の先輩からハガキが届く。そこには、相談事があると書かれていたため、満男は休日になると、先輩の元へと行くのだった。そこで、伯父である寅次郎と出会うが…」という物語である。
寅次郎は、旅先で街頭ショーをするも全く売れない歌手・三沢と出会う。
寅次郎は、三沢の顔を見て「あんたは大器晩成の相をしてるよ。きっと売れる」と元気付けるのだった。
柴又へと帰ってきた寅次郎。
満男も仕事から帰ってきて、ようやく家族団欒。
仕事の愚痴を家族へと漏らす満男に、寅次郎はセールスの極意を教えるのだった。
次の日、満男が仕事をしている時に、寅次郎は家を出て行ってしまう。寅次郎は満男の会社へ挨拶をしに行こうとしたが、おいちゃんがそれを引き止めて喧嘩へ。プイッと柴又を後にしたのだという。
ある日、満男の元へ1通のハガキが送られてくる。差出人は、満男の大学時代の先輩である川井信生。ハガキには、「お前に相談したいことがあるから、ぜひこちらへ旅にでもきてほしい」と書いてあった。
満男は休日になると、すぐにその先輩が暮らす滋賀県は長浜市へと向かうのだった。
その頃、寅次郎も琵琶湖のほとりで写真撮影をしているある女性・宮典子と出会う。
ひょんなことから脱臼をしてしまった典子。寅次郎の付き添いで医者に行き、寅次郎と楽しく会話をするようになった。
その頃満男は、先輩の妹である川井菜穂と親しくなっていた。
長浜市の祭りを見物していると、なんと寅次郎とバッタリ遭遇。寅次郎は、典子とこの祭りを見に行こうとしていたが、見に行く直前で典子の夫が迎えにきたため、あえなく一人で見物をしている最中だった。
寅次郎は、満男と菜穂が二人でいるところを邪魔しちゃ悪いと思い、すぐにその場から立ち去ってしまうのだった。
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様(第47作)』は、若者へのエールを送るような作品だった
というわけで『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』を観終わった。
まず最初の感想としては、
「今作は若者へのエールを送るような作品だなぁ…」
ということである。
今作『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』から、どことなく渥美清さんの演技・声に張りがなくなっている感じがする。
それもそのはず。今作出演は、医者から「やめておきなさい」と止められるほど、渥美さんの病気は進行していたらしい。
だが、渥美さんは無理を言って今作に出演した。その役者魂にあっぱれである。
私が感動したのは、今作の終盤。
宮典子に会いに、満男に頼んで車を運転してもらって鎌倉に行く寅さん。
典子が幸せそうにしている姿を見て、挨拶をしようと思っていた気持ちを抑えてそのまま帰る決心をする。
そして、江ノ電の鎌倉高校前駅で、旅に行く寅さんを見送るために満男も駅のホームにいるのだが、その時の会話が感慨深く、そして味わい深い。
満男「おれさ、また振られちゃったよ。恋ってくたびれるよな…。でも、なんかホッとしたんだ。」
寅「バカヤロウ!何言ってんだ!燃えるような恋をしろ!恥ずかしくて顔もあげられないぐらいに激しい恋をするんだ!!」
満男「ごめんなさい、反省します…」
寅「良いんだ。がんばれよ」
今作では、病気が悪化しているため、全体的にトーン落ち目の寅さんだった。
しかし、このシーンでの寅さん…もとい、渥美さんの演技は迫真である。
この時の寅さんは怒っている。しかし、それは「怒る」というよりもエールなのだ。
燃えるような恋…というのは、寅さん自身にとってみればそれはそのままの意味で「恋」だろう。
だが、満男の人生はこれからである。ホッと一息ついてる暇なんてない。恋だけじゃなく、「生きる」ということ全てにホッとしている暇なんてないのだ。
「人から笑われたって良いじゃないか。恥ずかしくたって良いじゃないか」
そんな寅さんの声がどこかから聞こえてきそうな…。
個人的には名場面だなぁと思った。
寅さんは、いつまでも優しい
今作の寅さんは、恐らく…恐らくだが、恋をしていないように思う。
かたせ梨乃演ずる宮典子は、それはそれは美人さんであり、ちょっと気の強いところがあるような…寅さん好みの女性である。
しかし、今作の寅さんは宮典子に恋煩いというよりも、「優しさ」で接する節が多い。
宮典子の境遇。「夫のこと、愛してないの」と打ち明ける寂しさに、寅さんは自分が受け皿になるよう必死に努力をした。
しかし、最終的に典子は、迎えにやってきた夫とともに…愛してないと言っていた夫ともに、自宅へと帰ってしまう。
残された寅さん。
雨が降った時だけみんなから必要とされる傘のような…。
晴れた日には見向きもされない、傘のような寂しさを寅さんから感じてしまった。
鎌倉にある典子の元へ行った時、もし典子の心に雨が降っていたのだとすれば、寅さんは真っ先に車から降りて典子を励ましただろう。
しかし、典子の心には雨が降っていなかった。
娘とともに、晴れやかな笑顔だった。
寅さんは気づいた。
「俺はもう、必要とされてない。良かった良かった」
寅さんは、自分のことを客観視していた。ホッとしている自分がいることを知っているのだ。
だから、満男が自分と同じように、
「ホッとしたんだ」
と言った時に激昂した。満男は、自分と同じ目に遭わせたくない…伯父なりの優しさである。
いつまでも優しい寅さん。そんな寅さんを、涙なしでは見られないのだ。
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』を総合評価するなら?
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』を総合評価するなら、星5中の星5評価である。
個人的には名作の部類に入るレベルの作品だと思う。
今作『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』では、どうしても渥美さんの体調不良の影響で、演技が下り坂となってしまっている。その点は前述のように病気の影響なので致し方のないことだ。
しかし、やはりあの鎌倉高校前駅での迫真の演技は感動したし、最後に小林幸子演ずる「三沢」と再開するシーンなどは涙がホロリと流れる良いシーンだった。
満男の葛藤、そして菜穂との関係性も「若人目線」で描かれていて秀逸。
ダレる要素もほとんどなく、高評価に値する作品である。
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』は、寅さんの恋愛ストーリーが見たい人にオススメである。
前作、今作と、満男主体ではなく寅さん主体のラブストーリーとなっているため、往年の寅さんファンにはオススメする作品である。
終わりに
『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』についてレビューしてきた。
ついに47作まで見てしまった…。
残るは第48作+特別編の2作品…。早いものだ。
そういえば、前作の時点で御前様を演ずる笠智衆さんがお亡くなりになっているため、御前様の姿は見えない。
その辺も、なんだか時代が変わってきたんだなぁ…と痛感する一つのところである。
渥美さん生前作品としては最後となる48作目…。
これを見てしまうと、寅さんとの旅が終わってしまうようで見たくない。
だが、そうは言ってもやっぱり見ちゃう。もし寂しくなったら、何作目でも良いから寅さんに会いに行けば良いのだ。きっと初代おいちゃんや2代目おいちゃんも元気にやってることだろう。