ふぉぐです。
ついさっき『男はつらいよ フーテンの寅(第3作)』を観終わったので、さっそくレビューしていきたいと思う。
ちなみに、ネタバレ全開でレビューしていくので、まだ観ていない方はご注意を。
では、さっそくレビューに移ろう。
Contents
『男はつらいよ フーテンの寅』
『男はつらいよ フーテンの寅』は、1970年公開のコメディ映画。
監督は森崎東。脚本に山田洋次。主演は渥美清、倍賞千恵子、前田吟。マドンナ役に新珠三千代。
あらすじとしては、「自分のお見合いをパーにした寅次郎が、湯の山温泉に住み込みで働いていた。その理由は、一目惚れしたマドンナを見ていたいからだった」という物語である。
葛飾は柴又で団子屋を営んでいる「とらや」夫婦。
そこに、隣の工場長が駆け込んでくる。
寅次郎に縁談話が持ち上がっていて、肝心の寅次郎がいないんじゃ…という話になっていた。
そこへ、一本の電話が入ってくる。
電話はなんと、偶然にも寅次郎からだった。
「今どこへいるんだい?」と聞くおじちゃん。
すると、電話の向こうでどこにいるかをぼやかす寅次郎。
「あ、ほら、店の前に客が来てるよ!」
と諭す寅次郎。
「あ、ほんとだ。ほら、客来てるぞ」とおばちゃんに伝えるおじちゃん。
そこへやってくる寅次郎。すぐそこの公衆電話で電話をかけていたのだった。
その夜。寅次郎へ縁談話が来ていることを伝えるひろし。
寅次郎は、俺は女性に高望みはしてないとは言いつつも、あれやこれやと注文が増えるのだった。
そしてお見合い当日。緊張した面持ちでお見合いに臨む寅次郎。
そこへやってきたお見合い相手。その相手は寅次郎の幼馴染で、さらに旦那持ちだった。
彼女は、旦那が浮気をしてしまったことに絶望して、身ごもりながらも逃げてきたという。
それを聞いた寅次郎は、その幼馴染と旦那との間をとりもち、2人のために宴会やハイヤーまでもを用意した。
その費用は全て「とらや」宛となり、もちろんおじちゃんおばちゃんはカンカン。
ついにはひろしも怒り、寅次郎と決闘してあえなく寅次郎は敗北。
すぐに柴又を後にするのだった。
そして一月後。とらや夫婦が湯の山温泉へ旅行へ出かけるという。
湯の山温泉について一息築こうとするも、コタツの電源がつかない。
女中さんに「コタツがつかないんです」と話すと、「今から修理をしてくれる番頭さんをお呼びしますね」と言い、さらにはその番頭が「宿の女将さんに惚れて住み込んでいる」という小話まで教えてくれた。
そして女中さんは、
「とらさーん!!」
と大声で叫び、その番頭を呼ぶ。
悪い予感がしたとらや夫婦は、番頭としてやってきた寅次郎に背を向けながら、コタツ修理を待っていたのだった。
『男はつらいよ フーテンの寅』は、いつもとは趣向が違う作品だった
というわけで『男はつらいよ フーテンの寅』を観終わった。
まず最初の感想としては、
「なんか、いつもとは趣向が違うな…」
と思った。
それもそのはず、まず監督が山田洋次ではなく森崎東となっていた。
なるほど、だからいつもの寅さんよりこう…若干違うんだなと…。
いや、寅さんはいつもの寅さんなんだけど、まず今作は妹であり「男はつらいよ」での真のマドンナでもあるさくらの出番が少ない。
おじちゃんおばちゃん、そしてひろしはまぁまぁ出てくるんだけれど、さくらの出番がめちゃくちゃ少ないのだ。
これがまずいつもと趣向が違うな…と思った点。
そして、今作では2つのカップルが出来上がる。
女将さんの弟カップル。
そして女将さんカップルである。
だいたいの場合、寅さんがマドンナに片思いして振られる…というのが定番パターンである。
今作もその定番は守られているんだけれど、今作は、
「マドンナとその相手がイチャついているところを、寅さんは一度も見ていない」
というスタンスが取られている。
ベテランの女中さんが、たとえ話で寅さんに「あんたの片思いは終わってるんだよ」ということを伝えるシーンが印象的だが、その点もいつもの「男はつらいよ」と趣向が違うな…と思った。
別に趣向が違うからといってつまらないわけではないし、今作も今作で面白かったのは事実である。
白黒テレビと、カラーテレビと
『男はつらいよ フーテンの寅』で個人的に印象的だな…と思ったのが、最後の大晦日から正月に入るシーンで、とらやのテレビとマドンナ&大学先生宅のテレビが違うところである。
とらやの方は白黒テレビ。
マドンナ宅はカラーテレビである。
1970年ということで、まだまだ庶民にとってはカラーテレビよりも白黒テレビが主流だった時代なのだろう。
あのシーンでは、マドンナが庶民とは違う生活に足を踏み入れた…というのが見て取れる。
テレビのシーンの後、寅さんは船に乗って、乗客を楽しませているのもまた、心に響くものがある。
マドンナは、大学の先生と結婚し、豪華で何の不自由もない生活を送ることになるだろう。
もし、寅さんと一緒になっていたら、カラーテレビは見れないどころか、もしかすると結婚生活までもうまくはいかないだろう。
旅に行きたいという欲求が溢れてしまい、女房子供をほっぽってすぐに旅へ出かけたくなる性分のはずだ。
そういう点も考えて見てみると、最後のシーンは現実を突きつけられた感覚を覚える…そんな、ちょっと暗い気持ちになるシーンなのではないか…と思った。
人情よりも、ドタバタコメディ感
『男はつらいよ フーテンの寅』は、どちらかというと人情要素よりもコメディ感が強い作品だと思う。
それこそ、先述した「マドンナに相手がいることを知るシーン」などがその典型ではないだろうか。
寅さん1人だけが、「マドンナに相手がいる」ということを知らないでいる。あの奇妙さはコメディならではのものだ。
しかし、人情チックというよりはコメディチック。言うなればコントとでも言えようか。
また、マドンナ、染ちゃん、信夫、寅さんでコタツを囲んでいる時のシーンなどもギャグ要素が出てくる。
人情劇というよりも、コメディ要素が強い映画だな…。そんな印象を持った。
『男はつらいよ フーテンの寅』を総合評価するなら?
『男はつらいよ フーテンの寅』を総合評価するなら、星5中の星4評価である。
全体として面白いし、前作などに比べると笑いの要素が強い。
それはそれで良い味を出しているし、今作では寅さんがいかに他人思いの良いやつなのか…というのもよくわかる。とらや夫婦からすればたまったものではないけど笑。
面白い要素はたくさんあるけれど、ぶっちゃけ途中でダレてしまうシーンもあったりするので、星1つ下げて星4評価とさせていただく。
『男はつらいよ フーテンの寅』はどんな人にオススメ?
『男はつらいよ フーテンの寅』は、今作だけ見ても普通に面白いので、男はつらいよシリーズに興味がある人はこの作品から見ても全然問題ないと思われる。
もちろん、個人的には1作目から見て欲しい気はするけれども、この作品はまとまりがよくて笑えるので、むしろこっちから見た方が良いかもしれない。
終わりに
『男はつらいよ フーテンの寅』についてレビューしてきた。
余談だが、今作で登場する湯の山温泉とは、どうやら三重県にあるらしい。
また、調べてみると広島にもあるみたいで、やっぱり男はつらいよシリーズでは西の方に行くクセみたいなものがあるようだ…笑。
それにしても、旅館にバスでついた時、あんな風に…優勝旗みたいなものでお出迎えしていたんだなぁ…と時代を感じた。
男はつらいよシリーズは、当時の生活感みたいなものを垣間見れるので、その点もまた面白いところである。